「価値と価格のアピール」をテーマに景気浮揚の追い風つかむ=しまむら 野中 正人 社長
衣料品専門店チェーン大手のしまむら(埼玉県)が苦戦している。2014年2月期連結業績は、売上高が対前期比2.2%増の5018億円、営業利益が同8.1%減の418億円、経常利益が同7.6%減の440億円、当期純利益は同3.4%減の265億円の増収減益だった。「デフレ時代の勝ち組」と呼ばれた同社は、景気回復とインフレ基調に転じた今、どのような戦略を実行するのか?
消費にはフォローの風が吹く!
──14年2月期は苦戦しました。15年2月期第1四半期までの業績も、売上高が対前期比4.8%増の1259億円、営業利益が同10.2%減の86億円、経常利益が同12.6%減の88億円、四半期純利益が同13.4%減の52億円と、利益が圧迫されています。
野中 14年2月期はとても厳しく、不本意な1年になりました。15年2月期第1四半期までの業績は、消費税増税後も在庫商品の価格を変更しなかったことで増税分を負担することになり、これが利益を押し下げました。
──あらためて、14年2月期(13年度)の減益要因を教えてください。
野中 13年度は「アベノミクス」に代表される景気浮揚策で日本が大きく変わった年だと思います。
ただし、変化が急すぎました。いちばんは為替です。
当社はSPA(製造小売業)ではありません。販売している商品の95%はサプライヤーから仕入れていて、残り5%は当社が企画し、海外の工場から直接買い付けている商品になります。為替予約はお取引先さまが行いますが、当社が買い付けている5%分だけでも為替の影響が大きかった。
13年度の前半は、それ以前に商談した商品が入ってきていましたので、為替変動の影響は軽微でした。しかし、後半になると影響が大きく出てきました。たとえば対ドルでは、1ドル80円から1ドル100円まで、率でいえば20~25%が一気に動きました。当社のような輸入商品をメーンに扱う小売業にとって、急激な為替変動は大きな利益圧迫要因になりました。
──13年度は、「ファッションセンターしまむら」「アベイル」の既存店売上高が前年実績を割っています。
野中 要因は大きく2つあると考えています。1つは若年層の消費がとても弱くなっていることです。10代後半から20代にかけては、ファッションのトレンドがほぼ見当たらない1年でした。強いて挙げるなら、着回しのきく無地やチェック柄のシャツなど、無難でベーシックなものが売れました。ほかにも小さなトレンドが現れては消えたりして、結局、ファッション分野では目立ったものがほとんどありませんでした。
2つめは悪天候です。4月から5月にかけての異常低温、7月から8月の局地的な集中豪雨、10月の厳しい残暑、11月から12月上旬の暖冬、14年2月の記録的な積雪など悪天候にみまわれ、衣料品業界にとっては対応の難しい1年でした。
食品は、悪天候で買物ができないとなれば、買いだめやまとめ買いが期待できます。しかし、衣料品は天候が回復したからといって必ず購入いただけるものではありません。
──14年度の消費環境をどのように見ていますか。
野中 13年度は、「アベノミクス」により「これから日本は成長していくんだ」という「スイッチ」が入ったように思います。消費者の購買意欲も高まっていますから、これが継続すれば、間違いなく商売の追い風になるでしょう。