主役は「店」と「部門」 現場目線の改革で「強い店」をつくるための方法とは
「消費の二極化」「健康」「環境」への対応もカギ
そのうえで、各社には社会や消費者の変化をとらえたアクションも求められる。
まず、コロナ禍で顕著になっている傾向の1つが、「消費の二極化」である。それ自体はコロナ前から指摘されていたことではあるが、「所得格差の拡大による二極化」(中間層が減少し、節約志向と高質志向の消費者に二分される)だけでなく、「生活シーンに合わせた個人/世帯単位の消費の二極化」にも目を向ける必要が出てきた。というのも、外食機会も減り、そのぶん「家で食べる食事にこだわりたい」という欲求を持つ消費者が増えているからだ。たとえば、平日は安く手軽に済ませ、週末は手の込んだ料理を楽しみたいといったように、家での食事にメリハリをつける動きが見られる。
“内食回帰”とはいえ、SMの独擅場とは言えないのが現状だ。コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食店は、テイクアウトやデリバリーによって中食・内食市場の開拓に勝負をかけており、SMは外食に負けない味の追求、メニュー提案を行っていく必要がある。
もちろん、コロナ禍で景況感は悪化しているとされており、実際に収入面で大きな影響を受けている消費者も多い。価格対応も引き続き重要なテーマであることは変わらない。
もう1つコロナ禍で進んでいるのが、健康志向の高まりである。コロナ対策として「免疫力の向上」「適切な栄養の摂取」を意識する消費者が増えているほか、自粛生活が続くなかで運動不足や「コロナ太り」といった健康面での悩みを抱える人も少なくない。
加えて、社会や環境に対する意識も高まりつつある。近年、SDGs(持続可能な開発目標)や「エシカル消費」といった言葉がよく聞かれるようになった。コロナ禍で将来への不安が募るなか、よりよい社会や環境を創造・維持するために何ができるかに考えを巡らす消費者も増えている。
こうした流れを受けてSMは、健康軸の商品提案や売場づくり、環境に配慮した梱包材の使用や、倫理的に正しい持続可能な調達への取り組みといった、消費者の代理購買者としての責務を果たすことが、今後はより求められていくことになる。
生産性向上の大チャンス!「ミレニアル世代」の理解も必須に
他方で、業績が好調な今こそ、時間と労力、あるいは一定の投資を行って取り組んでおきたいこともある。
1つは、SM業界における永遠の課題ともいえる、店舗オペレーションの改善だ。SM業界は全産業の中でも生産性の低さ、利益率の低さが指摘され続けてきたが、いまだ大きな改善、進化は見られない。
しかし、価格訴求に力を入れるにしても、付加価値型商品の提案で集客を図るにしても、利益を出すためにはそれを支えるオペレーションの効率化は不可欠である。今こそ店舗における一つひとつの作業を棚卸しして、生産性向上を妨げている業務フローを可視化し、解決策を講じるタイミングだろう。また、業務効率化に役立つデジタル技術の進化は著しく、業績好調な今こそ、そうした領域への積極的な投資を行うチャンスである。
そしてもう1つ考えておきたいのが、「ミレニアル世代」をはじめとする若い世代への理解を深め、部分的にでも商品や売場、販促面で対応することである。「若年層の取り込み」を経営戦略の1つとして掲げるSM企業は多いが、具体的な施策をもとにアプローチできているケースはまだ少ない。
言わずもがな、彼らはSMにとって企業存続を左右する重要な“未来の顧客”である。詳しくは本特集の別項を参照されたいが、ミレニアル世代の消費行動や欲求、トレンドをとらえながら、彼らを取り込むための店づくり、売場づくり、SNSなどを介した情報発信の手法を今のうちに考えておきたい。
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