ホームセンターの“同質化”はなぜここまで進んだのか?好調企業の共通点は革新と差別化

千田直哉
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ホームセンターの同質(セイムストア)化はなぜ起こったか

 

 ホームセンター業界が成熟化していった理由は明確である。オーバーストア(飽和化)によるものだ。ただし、単なるオーバーストアではない。オーバーセイムストア(同質飽和化)である。

 そもそも、店舗数が増加すること自体は成長阻害の問題にはならない。たとえば業種が異なれば、相乗効果こそ喚起するかもしれないが、足を引っ張り合うことはまずないからだ。相互にカニバリを起こすセイムストアが過剰に存在することが主因であり、取扱商品が市場に横溢してしまった結果といえるだろう。

 では、ホームセンターの同質(セイムストア)化は、なぜそんなにも進んでしまったのだろうか。ひとつには、問屋依存型の商品政策を挙げることができる。同業他社が、同じ問屋に仕入れを丸投げする。その結果、売場が画一的なものになるということだ。現在は、SPA(製造小売業)型を志向し、オリジナリティに溢れる商品を製造する企業も散見できるようになったが、大きな流れは変わっていない。

 ふたつめは、競合企業のキャッチアップである。すなわち、ホームセンター業界内はモノマネのオンパレードだった。多少でもよい業績を残している企業の噂を耳にすれば飛んで行き、即座に自社の店舗に導入する。ただ、ホームセンター業界はモノマネを良しとしてきた業界でもあった。ホームセンター企業のほとんどは、母体企業の将来性を憂慮して、先達に指導を乞いながら参入。先達を見習いながら店舗を開発し、順風満帆と成長してきた。モノマネが成功体験だから、忘れられないのは道理だ。しかし、その結果がオーバーセイムストア状態を招いている。

 3つめはローコスト経営だ。3S1C(標準化、単純化、セルフサービス、集中化)を実践して、売場の人員はどんどん削られる。売場は個性を押し出しにくい体質になっている。そして、本部も店舗も、ルーチンワーク以外のことを考えなくなる。思考能力の欠如だ。思考能力が欠如するから、“流行り言葉”に踊らされる。その時々の流行に飛びつくことが、またセイムストア化を進める。勝ち組企業から人材を引き抜いて、自社で再現する企業もある。もはや、仁義や道義や倫理はどこにも見当たらない。そのことがオーバーセイムストア化をさらに促進させていった。

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