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ドラッグストアの針路 #3 “マツキヨ・ココカラ連合”誕生は大型再編の前哨戦!?

マツモトキヨシホールディングス(千葉県:以下、マツキヨHD)とココカラファイン(神奈川県)が2021年10月に経営統合する。統合が発表された際、業界からは「1兆円連合が誕生する」と畏怖の声が聞こえたが、足元では、現在売上規模トップのウエルシアホールディングス(東京都)、2位のツルハホールディングス(北海道)が熾烈な首位争いを繰り広げており、“マツキヨ・ココカラ連合”の発足を契機に「大型再編が勃発するのではないか」(あるドラッグストア企業の幹部)という見方も浮上している。ホールディングス=HD

図り知れぬ統合シナジー

 最近、ココカラファインでは、これまでにはなかった新たな化粧品ブランドが見られるようになった。「ARGELAN(アルジェラン)」、「LUNGTA(ルンタ)」といったマツキヨHDのプライベートブランド(PB)商品が、統合に先立って2021年2月からココカラファインの店頭に並んでいるのだ。

 経営統合を控え、早くも商品の共通化が図られている格好で、マツキヨHDでは決算発表で「MD(商品政策)の統合による仕入れ条件の改善で、シナジー効果が見込めている」とコメントしている。

 仕入れ条件の改善ばかりではない。MDの統合やPBの相互供給に加え、販促施策の統合、また、店舗運営では業務の標準化と効率化、さらに調剤事業では規模を活用した薬価の改善、備品の共同仕入れなど、統合によるシナジー効果が見込める分野は少なくない。

 両社は肥沃な首都圏を地盤にしているうえ、マツキヨHDのネームバリューと化粧品を軸とした商品戦略がココカラファインにも移植されれば、競合にとって脅威の存在となるのは確実だ。

 ココカラファインではすでに、21年3月期下期だけで約40億円の収益改善を見込み、統合後3年後をめどに「両社で数百億円の効果」が期待できるとするなど、マツキヨHDとの統合効果のソロバンをはじいている。マツキヨHDとココカラでは、頼みの綱であったインバウンド(訪日外国人)が激減し、手痛い打撃を受けた。このインバウンドの剥落分を両社の統合効果で補う格好になりそうだ。

大手は水面下でパートナー探し!?

 だが、1兆円近い規模を手にするとはいっても、決して手放しに喜べる状況ではない。

 インバウンドの復活が「2~3年は見込み薄」(ある百貨店関係者)ということに加え、足元では、ウエルシアHDやツルハHDといった大手が食品スーパーからの顧客を奪取せんと生鮮食品を強化中だ。しかも現在、ウエルシアHDとツルハHDの“2強”は統合後のマツキヨHDとココカラに売上高規模でひたひたと迫っている。ウエルシアHDは21年2月期に売上高9541億円、ツルハHDは21年5月期に売上高9200億円を計画しており、マツキヨHDとココカラの21年3月期売上高予想の合算に肉薄する。

 ツルハHDの鶴羽順社長はかねて「業界は3、4社に集約される」と話しており、今後の大型再編の可能性も示唆する。同社は20年5月にJR九州傘下だったドラッグイレブン(福岡県)を子会社化しており、全国規模のチェーンストアを完成させようとしている。

 こうしたM&A(合併・買収)戦略が奏功すれば、同社が公表している24年5月期までの中期経営計画で掲げる「店舗数3000店、売上高1兆円」を前倒しで達成することも期待される。

 マツキヨHDとココカラの経営統合に触発され、「大手は水面下でパートナー探しを始めているのではないか」と(ドラッグストア業界と取引のある大手メーカー幹部)と冗談と本気ともとれないような発言も聞く。マツキヨ・ココカラ連合の誕生は、大型再編勃発の転換点であるのもしれない。