ウィズコロナ時代のショッピングセンター経営16 顧客のLTVを収益に変えるための手法とは
手も足も出なかったSC運営管理業務
1回目の緊急事態宣言解除後も社会的な自粛圧力は続き、国民は外出を控え、仕事も在宅ワークが広がり都心の商業地は惨憺たる結果となった。加えて出張や旅行も大きく減少したことから鉄道や航空の利用客も減り、駅や空港における商業施設の営業成績も前年を大きく下回り、更なる緊急事態宣言はこの流れを加速する。
しかし、この環境下においてもSC運営管理業務に携わる営業担当者、フロア担当者、エリアマネージャーと呼ばれる人たちは「店舗巡回」「テナントコミュニケーション」を続け、店長や店員の嘆きや愚痴を聞き続けることしかできず、テナントリーシング担当者も、売上不振となったテナントの店舗開発担当との賃料減免交渉や退店テナントの引き留めに忙殺されている。
これは前述の通り、SC事業の収入が賃料に偏っているため、どうしてもこういった業務を行わざるを得ない。しかし、若く優秀なSC社員がこういったアナログ、かつ後ろ向きの業務に従事するのを見るにつけ、今、見直すべき時ではないかと思っていた矢先、その不安は的中し、コロナ禍において若手社員のSC業界からの退出が徐々に始まっている。
これまでの収入源の拡張手法
SC事業の利益連鎖は、顧客の買い物(飲食等)を起点にテナント(店舗)、SC運営、オーナー(所有者)とそれぞれが収益を享受する(図表4)。
テナントは販売利益、SC運営では運営利益、所有者は賃貸利益をそれぞれ収受する。そのため、SC事業者が賃料以外の収益を得るために始める新規ビジネスは、これまで(今でも)川下であるテナント業(店舗営業)にビジネスを広げることが多かった。
自らのブランド直営する場合もあれば、ブランドのFCとなって商品を仕入れ店舗運営するなどいくつかの方法を取ってきた。
しかし、残念ながら私の知り得る限り、この店舗事業を成功させている企業(SC事業者)を知らない。むしろうまくいかず撤退した例は枚挙にいとまがない。この理由については、今回は割愛するが、いずれにしてもSC事業のバリューチェーンの中にテナント業(店舗運営)を組み込むことはそう簡単では無く、できれば避けたいと分野と思っている。
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第89回 意外と知らない、独特すぎる日本のSCの仕組みと運営管理とは
この連載の一覧はこちら [94記事]
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