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激動の流通 #5 ドラッグストアの次なるターゲット

ドラッグストアの市場は順調に拡大しており、2019年度に対前年比5.7%増の7兆6859億円(日本チェーンドラッグストア協会調べ)となった。食品スーパー(市場規模約11兆円)、コンビニエンスストア(約12兆円)には及ばないものの、ドラッグストアは身近な小売業として存在が確立され、他業態を脅かしている。2021年もドラッグストアの躍進が続くのだろうか――。

“マツキヨ・ココカラ連合”誕生で勢力図はどう変わる?

 「2021年はマツモトキヨシホールディングス(千葉県)とココカラファイン(神奈川県)の経営統合が控えている。『1兆円連合』の結成は、現在2位以下にインパクトを与えるのは必至だろう」

 そう指摘するのは、あるドラッグストア企業の幹部だ。だが、2社の統合に伴い2位以下に転落する上位企業も“マツキヨ・ココカラ連合”に肉薄している。

 現在、業界トップに立つウエルシアホールディングス(東京都)の20年2月期の売上高は8682億円。21年2月期の業績予想では、売上高9350億円に達する見通しで、22年2月期には売上高1兆円を突破するのは確実だ。

 2位のツルハホールディングス(北海道)の20年5月期の売上高は8410億円で、21年5月期には8600億円となる見通しで、“マツキヨ・ココカラ連合”が誕生したとしても決して盤石ではない。

次の舞台は「小商圏」か!?

 そして昨今は、「ドラッグストア」を一括りで比較するのも難しくなりつつある。マツキヨやココカラのような「医薬品+化粧品」型のドラッグストアもあれば、最近は売上高上位のドラッグストア企業が、生鮮食品を備えた生鮮強化型の店舗を展開している。

 ある経営コンサルタントは、「(生鮮食品の導入により)ドラッグストアは一段と小商圏に土俵を変えていくだろう」と語る。通常の買物は豊富な品揃えの食品スーパーなどで済ますものの、買いそびれたり、購入したが足りなかった生鮮食品はドラッグストアで買うという行動も定着しつつある。

 これを促進しているのが、ドラッグストアの「爆発的」とも言える食品の安売りである。

 大手ドラッグストアチェーンの食品の粗利益率を見ればわかりやすい。ウエルシアホールディングスの20年2月期における医薬品の粗利益率は40.7%であったのに対し、食品は20.9%。ツルハホールディングスも医薬品41.5%に対し、食品15.1%となっている(20年5月期実績)。

 一定のカテゴリーの粗利益率を抑え、集客装置とし、ほかの粗利益率の高いカテゴリーを同時購買してもらう、というのは、チェーンストアのオーソドックスな手法である。医薬品という、一定の需要があり、かつ高粗利益率の商品を扱うドラッグストアだからなせる技でもある。

ドラッグストアの次のターゲットは……

 しかし、そうしたドラッグストアの特性も、「ドラッグストアの店舗数が増加して一段と小商圏化を迫られれば、品揃えはコンビニ並みの水準にシフトせざるを得ないだろう」(前出の経営コンサルタント)とも指摘されている。つまり、「生鮮食品の次は、弁当や総菜、ファストフードといった具合に、コンビニの土俵にドラッグストアが上がってくるのも時間の問題」(同)というのだ。

 生鮮食品の販売で成功をおさめたドラッグストアが、コンビニの独擅場だった総菜、ファストフードにねらいを定めてくる可能性は高い。実際、食品強化型フォーマットの高速出店で勢力を急拡大中のコスモス薬品(福岡県)は、総菜のプライベートブランド商品をすでに販売している。

 現在、“小商圏の王者”に君臨するコンビニは、ドラッグストアの次の照準となるか――。2021年もドラッグストアの躍進から目が離せない。