ユニクロ世界一、滅びゆく旧来型商社、日本企業は外資に買収… 10年後のアパレル業界予測
循環型経済への移行で二次流通市場が発達する
いかがだろう。私は、占い師ではないので、こうした考察が当たるか当たらないかは問題ではないと開き直っている。むしろ、こうした未来に対する事業環境を予測せず、その場その場の近視眼的対応をしている企業は、もう少し長期的な視座をもって頂きたいということなのだ。もちろん、雨が降れば傘を売る。マスクがなくなればマスクを増産するなど、その場、その場の生き残り施策は大事だが、今のアパレル業界を見ていると、こうした大局的視座にたったビジネスを展開しているとは思えないほど局所的だ。
例えば、どのアパレル企業に行っても、判で押したように「次は、サステナブルのブランドを立ち上げよう」という。また、評論家の方々も「サステナブルだからアパレル企業は在庫問題をなんとかしろ」と声高に叫ぶ。しかし、なぜ、人がサステナブルな商品を選ぶのか、そして、そもそも、サステナブルな商品とは何かという根源的な問いかけに答えられない。当然ながら、人がトレンドとしてサステナブルな商品を求めるのではなく、冒頭に書いたような社会背景の下、モノにまみれ、必要以上の商品が不要となった消費市場により消費型経済から循環型経済に移行するという背景があるという因果関係が重要なのだ。現象ばかりを追い続け、「次のトレンドはなんだ」と躍起になっているから、そもそも20年で市場の30%が消えて無くなっている一方で供給量は倍増しているという需給のアンマッチから在庫破棄問題が起きているのに、そのことも理解せずに、単に「AI を使えば、世の中から余剰在庫がなくなる」など勘違いし続けているわけだ。
また、循環経済になれば、企業は必要な量だけを生産し、破棄損ゼロを実現するために二次流通市場が発達するのは自明だろう。論理立て、筋道を立ててものごとを考えれば誰でも分かる話だ。某メディアで、「進むサステナブルへの取り組み」と書かれていたので、よく読んでみると、クズの綿を再生産した素材を使い、相も変わらず大量生産し「これがサステナブル商品だ」などとしていた。
今のアパレル企業は、目先のことで精一杯になり、ものごとを長期的視座に立って「今」を考えられない状況になっている。こんな企業に未来はない。古き良き時代は、アメリカ様を見ていれば、そこに「4年後の答え」はあった。しかし、もはや答えは自分でつくる時代になった。先生はいなければ教科書もない。こうした世の中を楽しめる企業だけが生き残ることになる。
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)