ユニクロ世界一、滅びゆく旧来型商社、日本企業は外資に買収… 10年後のアパレル業界予測
アパレルのKPIは売上からLTVに変わる
次に、欧州と北米などの市場を考えていきたい。これら先進国と呼ばれる市場では、これからは必要な量だけを求め、必要な量だけを消費するようになる。ユニクロが「これから必要な量だけを製造する」といっているのを聞いて、「ああ、プロパー消化率を上げるのか」と極小的な発想しかでてこない人は「チマチマ病」(物事を俯瞰して見られず、局所的なところしか見ない癖)にかかっている。
売上を作ることを目的とし、「プロパー消化率 50%」など、最初から半分は定価で売れない計画を立ててビジネスをしているアパレルは極めて厳しい状況に追い込まれることになる。また、アパレル企業の主要な業績指標(KPI)は、売上ではなくLTV (Life time value; 個人、個人が、生まれてから死ぬまでどのぐらい特定の商品、サービスを使うかという指標)に変わる。
日本市場の成長は止まり、乱発貨幣のつけで円安が進み、外資によるM&A(合併・買収)によって、私たちの上司は中国人か欧米人になる。すでに、その兆候はでているではないか。今は無きレナウン、マークスタイラー、バロックジャパンリミテッドなどは、中国の会社だ。これからの5年、10年、語学が話せず、あうんで仕事をしてきた人は仕事がなくなってゆく。また、語学ができるだけではダメで、外国人とのコミュニケーションは論理と事実だけがベースとなる。
商社の多くは消えて無くなるだろう。私の出自だけに無念極まりないがしかたない。成長期に、一気に国の経済をブーストさせてきた商社という、売上の拡大だけがレゾンデトール(存在価値)だった業態は大きく業態転換を余儀なくされ、流通構造からはずされる。D2Cとはそういう意味だ。商社の中でD2Cという言葉を使っている方がおられるが、こういうことを分かっているのだろうかと思うときがある。
そして、もはや日本という衰退市場と決別したユニクロを横目で見、世界展開に遅れた企業は消えゆき、顧客をしっかり囲い込んだ企業だけがAI で需要を予測し、PLM(Product Life Management)で自動生産をする。そして、それでも余った商品は二次流通市場で再販されて消費され、格差が広がった底辺を支える人達が、中古品を消費する。こうして、アパレルの在庫の売れ残り問題、破棄問題は多くの企業の倒産と統合によって解決されることになる。地球の温度を変えるほどの量のゴミを排出し続けてきた反逆がコロナによる産業再編なのだ。
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