全国生協アンケート!コロナ禍で宅配、店舗の経営環境はどう変わった?今後の課題と強化施策は?
配送現場の人手不足が6割以上の生協で改善
次にQ4では宅配利用者の世代別割合について聞いた。すると、40代以降の世帯がほぼ同じ割合で並ぶ結果となった。
一方、利用が増えた世代では、最多回答は31~40歳だった。コロナ禍は近年生協が取り込みを強化してきた若い世代に宅配サービスを利用してもらう好機になったようだ。
しかし、同時に61~70歳や51~60歳といった年齢の高い層の利用も増えたため、生協が長年の課題とする「組合員の高齢化」という構造は変わっていない。
これを解消するべく、WEB広告の強化や、子育て世帯への配送サービスの割引適用など、若い世代を獲得するための施策に引き続き取り組んでいるようだ。
続いて、「コロナ禍での需要集中で、宅配サービスに影響が出たか」という質問に対しては、9割以上の生協が「出た」と回答した(Q5)。多くの生協で物流現場の混乱や欠品、配送の遅延などが生じたようだ。
その一方で、近年、深刻な課題となっていた配送現場の人手不足については6割以上の生協が「改善している」と答えた(Q6)。前年の調査結果は約3割だったことを考えると大きく状況が変わっている。コロナ禍で失業者や採用をとりやめる企業が増えたことで、生協の新卒・中途採用希望者が多く集まるとともに、退職者も減少傾向にあるという。
Q7の宅配事業で今後、強化していく取り組みでは「組合員とのコミュニケーションの強化」に回答が集中した。週次配送モデルの生協は、定期的に顔を合わせることによる組合員とのコミュニケーションを強みとしてきた。しかし現在は、感染防止の観点から置き配対応が増え、組合員との接点が希薄化していることが課題になっているようだ。その対策として、スマホアプリやSNSなどのネットを活用したコミュニケーションツールの開発に動きだしている生協が多くみられる。
絶好調の生協宅配だが、宅配ニーズの高まりで競合各社も勢力を拡大しており競争は激化している。そうしたなか競合対策を行っているかという質問に「はい」と回答したのは半数未満にとどまった(Q8)。対策を打っている生協では、配送や注文の利便性向上などに取り組んでいるようだ。
Q4 宅配利用者の世代別割合について
利用が増えた世代の最多回答は「31~40歳」。コロナ禍は若い世代に生協宅配を利用してもらう好機となったようだ。しかし同時に高齢者の利用も増えたこともあって、宅配利用者の平均年齢は上昇している生協が7割で、生協が課題とする「組合員の高齢化」に変わりはないようだ。
①宅配利用の組合員の世代別割合(27生協平均) | 20歳以下 | 0.8% |
21~30歳 | 3.5% | |
31~40歳 | 14.0% | |
41~50歳 | 19.9% | |
51~60歳 | 19.0% | |
61~70歳 | 19.5% | |
71歳以上 | 22.3% | |
②コロナ禍で利用が増えている世代(3つまで選択) | 31~40歳 | 12 |
61~70歳 | 8 | |
41~50歳 | 7 | |
51~60歳 | 7 | |
③宅配利用者の平均年齢の傾向 | 高くなっている | 7 |
変わらない | 2 | |
低くなっている | 1 | |
高くなっている理由●65歳以上の新規加入者が多い ●地域の高齢化 ●若い世代への宣伝不足 ●外出自粛要請にしたがい若い世代向けのイベントを中止したため●高齢者の夕食宅配利用の伸長 低くなっている理由●以前よりも若い世代の加入が増えたため |
④若い世代の獲得のために行っていること | ●WEB広告の強化 ●生協や協賛企業の商品を詰めた「はじめてばこ」を子供が産まれた世帯へ送付する加入推進策 ●子供のいる世帯へのサービス料割引(妊娠中~未就学児まで)の実施 ●子育て世帯向けのカタログの充実 |
Q5 コロナ禍での需要集中で宅配サービスに影響が出たか
予測なく受注量が急増したことで、ほとんどの生協では、物流や配送現場がひっ迫。配送の遅延や、欠品、新規加入者の受け付けができないといった状況に陥った。こうした事態をいかに防いでいくかが、今後の生協宅配の課題の1つになりそうだ。
出た | 26 |
出ていない | 1 |
具体的な影響と対応策●宅配の新規利用受付に遅れが出た ●物流が滞り一部商品で規格変更や遅配が発生 ●受注点数の増加による欠品の発生 ●荷量の増加により物流センターがひっ迫したため、ラインや稼働時間を増やした |
Q6 配送業務の人手不足は改善しているか
近年の大きな問題となっていた配送業務の人手不足については、コロナ禍の不況で求職者が増えたことで採用が進むとともに、離職者も減り、解消傾向にあるようだ。一方で、需要増に対して人手の確保が追いついていない生協もある。
している | 16 |
していない | 10 |
改善した理由●コロナ禍の影響で求人への応募者が増えた ●コロナ禍の不況による退職者の減少 ●新卒・中途採用が進んだため 改善していない理由●地域の雇用環境が改善していない ●今後の見通しが不透明なため積極的な採用ができない ●配送コースが増加しているものの採用が追いつかない |
Q7 配送業務の人手不足は改善しているか
「組合員とのコミュニケーション強化」に回答が集中した。生協がこれまで強みとしてきた組合員との接点が、コロナ禍で希薄化していることに対する危機感を感じているようだ。そうしたなか、デジタル活用による個々のニーズに沿った提案ができる仕組みの構築が進んでいきそうだ。
❶組合員とのコミュニケーション強化 | 21 |
❷注文のしやすいシステム開発 | 11 |
❸年齢層に合わせた提案やカタログの作成 | 9 |
❹配送の利便性向上(配送回数・受け取る時間帯や曜日・受け取り拠点の拡大など) | 5 |
❺取り扱い商品のカテゴリー拡大 | 5 |
❻独自に開発する商品を増やす | 4 |
❼配食や見守りなどの新規サービス | 1 |
❽そのほか | 1 |
理由と具体的な取り組み(丸数字は上記項目番号)❶コロナ禍での置き配の増加で、組合員とコミュニケーションが図りにくくなっているため ❶個々のニーズに沿った対応の強化が必要。CRMシステムを活用した取り組みを検討中 ❷WEB注文サイトの改善 ❷注文用スマホアプリの開発 ❷WEB活用による対面以外での加入方法の検討 ❺内食、健康志向、プチ贅沢などのニーズに応える商品の拡充 |
Q8 競合のECやネットスーパーが成長するなか対策を打っているか
競合のECやネットスーパーへの対策は打っていない生協が半数以上だった。理由としては生協組織の定期配送と、民間事業者の即時配送では事業モデルが異なるとみている意見が多かった。一方で対策として配送や注文の利便性向上を積極的に推進している生協も少なくない。
はい | 12 |
いいえ | 14 |
「はい」の場合の具体的な取り組み●WEBでの受注の推進 ●配送手数料の見直し ●配送員と組合員とのコミュニケーション強化 ●都市部での夜間配送対応 ●新築マンション等に置き配ができるように不動産会社へ折衝 ●アプリやLINEなど注文チャネルの拡充 「いいえ」の場合の理由●ECやネットスーパーの大きな進出がないエリアのため ●優先順位が低いため ●競合のECとはビジネスモデルが異なるため ●従来の方針からブレずに進んでいく |
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