破綻が迫るアパレル企業の事業再生手法#2小刻みのリストラが企業をジリ貧に

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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絶対にコスト削減してはいけない項目とは?

 しかし、ここで注意が必要なのは、販管費、変動費の中には削減してはならない費用も含まれているということだ。企業の中には、手を出してはならない項目に対して盲目的にコスト改善を行い、逆に競争力を低下させることもある。例えば、レストランチェーンなどであれば、「味」に関係するコスト削減は慎重を期すべきで、むしろ追加投資が必要なぐらいだ。なぜなら外食ビジネスの最大の差別化ポイントは「味」だからだ。縮小する日本市場で顧客のLTV (生涯価値)を高める最も有効な手立ては「味」なのである。実際、コンビニのコーヒー販売も、マクドナルドの復活も、結局は、「味」に徹底して取り組み顧客を呼び戻していった。

 しかし、えてして「味」などという強みは、数字で計測できないし、計測できないモノは改善できない、というのが従来の企業改革のセオリーだった。したがって、調達コストのような計れるものをどんどん削り、ますます劣悪な素材、調理法などを使い顧客が離れてゆく。アパレルも同様だ。今の消費者は本当に衣料品の善し悪しを見る目をもっている。販管費の中の広告宣伝費も、必要以上に削減することで新規顧客獲得の流入をとめ、縮小均衡とリストラを繰り返すケースも幾度もみてきた。ここは、本当に信頼できる専門家を雇い、一律削減でなく、その中身をきちんと精査することが前提であるということは、絶対に忘れないでいただきたい。

 さらに、大変不幸なことだが、企業の宝である人材に手をつけてしまうケースも最近ではニュースで見るようになった。本当に心が痛むことではあるが、経営者が止むなく人材に手をつけざるをえない修羅場に幾度も立ち会った。思い出せば、二度とこうした経験はしたくないといつも思うことを前置きにして話を続ける。

 まず、人材に手をつける場合は、1.必ず一回でやること (その場合は、先にあげたCAGRを3年分引き、三年後の売上規模に見合ったコストをターゲットにすること) 2.人材に手をつける場合は、必ず、「成長戦略と一緒に従業員に示す」ことだ。

 一枚目で、「3年の生きてゆくための猶予期間」を確保し、二枚目、三枚目を実行する

 何度も小刻みにリストラを繰り返す企業が本当に多い。もちろん、昨今、一度失った社員はもどってこないという事情は分かるが、小刻みにやると優秀な人材からどんどん逃げてゆく。企業は人なり。そうなれば、企業は再起不能になる。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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