ウィズコロナで働き方はこう変わる!クローガーが公開した膨大なマニュアルを徹底分析

平山 幸江 (在米リテールストラテジスト)
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実践的なガイドライン策定とデジタル化!米クローガーに学ぶ“新しい労働様式”

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日本よりも爆発的な勢いで新型コロナウイルスの感染が広がる米国。国全体が未曾有の状況に直面するなか、迅速な動きを見せたのが小売企業だ。場当たり的対応に終始することなく、最新の状況や感染データなどを収集し、従業員および顧客の感染防止のための取り組みに着手。あらためて米国の小売企業の組織力・運営力の強さを示した。本稿では業界全体に向けて独自マニュアルを公開した米スーパーマーケット(SM)最大手のクローガー(Kroger)の事例を中心に、取り組み例を紹介する。

小売業界に向けて店舗再開マニュアルを公開

 米国では3月半ばに40州以上が次々と外出禁止令を発令し、小売企業は店舗を閉鎖した。営業再開が認められたのは早い州で4月末のことだったが、クローガーは再開後の営業状況を踏まえて5月13日に「事業者のためのブループリント(Kroger’s Blueprint for Businesses)」というタイトルで、小売業界に向けて全59ページにもわたる、写真やイラスト解説入りの詳細な店舗営業再開マニュアルを発表した。

 その内容は図表のように、資産保護、オペレーション、サプライチェーン、マーケティングに至るまでの業務16領域をカバーした包括的な感染防止策を示したものだ。この中から、従業員の感染予防に関わる部分を紹介していきたい。

図表 クローガー「事業者のためのブループリント」がカバーする領域

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出所:KrogerBlueprint.com

社内感染状況をデータで把握

 まず、クローガーは社内の感染状況を正確に把握するため、「コロナ・ダッシュボード」と呼ばれるサイトを自社開発した。35州の約2800店舗・約50万人に及ぶ社員を守るため、人事部門が収集した①社内の感染者、②陽性反応者、③自宅待機者、④回復し職場に復帰した者、のデータを地図上で見ることができるようにした。加えて、米国疾病予防管理センター(CDC)からのホットスポット情報や、従業員に対して行っている体調管理アンケートのデータなども表示。店舗や各部門のマネージャーは、このダッシュボードの情報をもとに、店舗従業員に対して迅速に状況を伝えたり、必要に応じて自宅待機を要請したりする。もちろん、個人情報は一切開示されない。

 一方、経営幹部はこのデータから社内の“感染トレンド”を分析し、どの店舗でリスクが高まっているか、従業員の感染者が増えそうか、その結果従業員数に不足が出るかどうか、消毒のための一時店舗休業が必要かなど、さまざまな意思決定を行うことができるようになっている。

店舗運営の基準を明確化

 このほかクローガーは、「店舗運営に関する具体的な動作基準」として次の7項目を定めている。順に紹介していこう。

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記事執筆者

平山 幸江 / 在米リテールストラテジスト

慶應義塾大学、ニューヨーク州立ファッション工科大学卒業。西武百貨店勤務後1993年より渡米。伊藤忠プロミネントUSA(Jクルージャパン)、フェリシモニューヨーク、イオンUSAリサーチ&アナリシスディレクターを経て2010年より独立。日系企業の米国小売事業コンサルテーションおよび米国小売業最新トレンドと近未来の小売業をテーマに、ダイヤモンド・リテイルメディア、日経MJ他に執筆、講演会多数。

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