コメリとJAのタッグが、“世期の協業”と言われる理由
コメリ(新潟県/捧雄一郎社長)と上伊那農業協同組合(長野県/御子柴茂樹代表理事組合長:以下、JA上伊那)は2020年2月、JA上伊那の専売商品をコメリの店舗で販売するなど、協業を正式に開始することを発表した。JAとの提携はホームセンター(HC)業界で初めてとなる。
元“ライバル”との協業
「コメリさんとうちは、同じ地域で農薬・肥料・農業資材を販売しているので、昔はライバル関係だったと認識している。これからは互いに手を取り合うことで地域の農家の方々の利便性を高めていきたい」――。
コメリとJA上伊那の協業開始の調印式で、JA上伊那の御子柴茂樹代表理事組合長はこのように語った。
両者の提携に向けた協議は18年5月から始まった。JA上伊那からコメリに話が持ち掛けられた。
これまでJA上伊那は長野県伊那市を中心に資材店舗10店舗を運営していた。組合員の約9割が兼業農家で、日曜日、月曜日が休みで、平日の17時までしか営業しておらず、不便さを感じている利用者がいた。一方、近隣にあるコメリの店舗は、平日の夜間(19時半まで)、日曜日も営業していることから、コメリとの協業が組合員の利便性向上につながるのではないかと考えた。
その後、コメリ、JA上伊那に双方取引のある金融機関の仲介により両者の引き合わせがあったことが、協業のきっかけとなった。
両者の協業の流れは下記の通りだ。
19年2月に協業に向けた協議開始のリリースを発表。19年4月からJA上伊那が取り扱う農薬・肥料・農業資材などの専売商品の試験販売を開始し、徐々に取り扱う商品のラインアップを拡充させた。19年9月には、JA上伊那の資材店舗10店舗のうち5店舗を閉鎖し、コメリの8店舗で販売することが決まった。
20年1月よりJA商品の売場を拡大するため、コメリ8店舗の改装を実施。2月に両者は正式に協業を発表し、3月1日に8店舗同時にリニューアルオープンさせた。
HC企業とJAという、業態の垣根を超えた協業はこの事例が初めてとなる。