コロナショックに打ち勝つためのアパレルビジネス4つの打ち手

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
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真のブランドビジネスとは何か

 真のブランドビジネスとは何だろうか?

 私は拙著『ブランドで競争する技術』で、「ブランドとは価値の品質保証であり、ブランドとはその証である」と述べた。「ブランド間の価値、優劣の差」を定義し、また、競合に対しても、しっかり差別化するための戦略を考えなければならないのだ。ところが、日本の多くのアパレルブランドは、ブランドを理解しておらず、結局は、差別化のポイントが「価格のみ」になっている。つまり、「ブランドネームを外せばみな同じ」になっているのだ。

 一方、ユニクロが世界中で評価されるのは、「ユニクロの商品は安いから」ではない。「ユニクロの商品は品質が極めてよく、また、最低価格である」という「ブランド」ができあがっているからだ。

 つまり真のブランドビジネスとは、「他とは違うビジネス」を展開し、きっちりと自社のブランドポジションを確立することだ。そして、そこにはブランドの本質である「ワクワク感」あることが肝要だ。

 そのように考えると、米国で広がり、いま日本ではじまっているオフプライスストアがうまくいっている理由がよくわかる。

 日本のアパレルは「なんら差別化のない商品に、ただブランドネームを付ければそれがブランドである」というビジネスをやっている。「なんら差別化のない商品」なのだから、価格だけが消費者の判断基準になる。だから価格が安いオフプライスストア に消費者が集まるわけだ。

 したがって、オフプライスストア が流行れば流行るほど、そしてポイント還元のもとに実質値引きを常態化させるようなECが流行れば流行るほど、消費者はアパレルのディスカウントに慣れてしまい、定価で買わなくなる。それはブランドの毀損を意味する。オフブライスストアが今後さらに流行れば、アパレル産業は死滅してしまうだろう。

 さらに言えば、市場がそもそも吸収する以上の商品を過剰投入し続け、30%も供給過多で、百貨店にいたっては50%も供給過多という、需要と供給のアンマッチとサステナブルというアパレル業界が抱える2つの課題に対して、オフプライスストアはなんら解決策になっていない。

 こうした供給過多を是正するためには、本質的なところに手を打たなければならない。

 仕入れを半分に減らすとともに、日本に溢れんばかりにある衣料品を、とくに自社ブランドについては適正価格で買い取り、これらをきちんと再プレス、必要であれば再加工をして新しい提案をすべきだ。もはや、パリコレなどで発信される最先端ファッションなどは、我々のような庶民とは感覚が大きくずれている。

 そこで、「東京コレクションなど、日本独自のファッションを世界に発信し、日本にばらまかれた不要在庫を買い取り、再プレスし着こなすファッションを世界に発信しよう」。これが、私の提言だ。

 なお、逆説的だが、アパレルがきちんとブランドを理解し、そのブランドの維持・向上に努めれば、オフプライスストアマーケットは必要以上に拡大しないものだ。

  まとめよう。私がコロナショックのなかでアパレルがすべきことは以下の4点だ。 

  • この期に及んで、まだ、売上を維持しようと考えるな。どうせ売上利益は落ちるのだから、これを機会に大きく「次のビジネスのきっかけとせよ」
  • 今のデジタル技術をつかい、日本人の90%以上が持っているスマホ、およびパソコンを活用して、SkypeやWebEXなどでミーティングする。また、管理職はチームにミッションをあたえ、場所や労働時間の拘束をせず仕事の場所は自由とする。さらに、成果で成績を図る
  • EC化率の遅れている企業は、信頼できるコンサルタントをつかってECの拡大を狙う。巣ごもりしている暇があれば、今こそ大胆な投資を行うべきだ。私なら半年で要件定義を終わらせ、1年半で最強のWebを稼働させてみせる
  • 商社を脅してウソをいわせるのでなく、自分の目で一次情報を見、盛夏、そして秋冬以降のデリバリーについての納品リスクに備え、これを機に一気に余剰在庫に対して本気で向き合い「半値八掛け(売価*50%*80%、つまり元の売価の4割)」で全てを換金する。また、自社のブランドを消費者から買い取り二次流通市場をWebやアウトレットにつくる

 

  以上である。我々は、メディアリテラシーを高め、冷静になるべきだ。そして、政府の誤った政策(今政府がやるべきは、人類がウイルスに勝つまでの期間、雇用や事業を救うことであって、お札を大量に刷ったり、株価を上げることではない)に対して、声を大きく批判をする。また、対案のない野党には退場してもらう。

  やや過激な意見を書かせて頂いたが、私たちはメディアにあまりに踊らされているように思う。季節は、陽気な春なのだ(29日の日曜は都内で大雪となったが…)。ものごとを前向きにみよう。きっと違う世界が見えるはずである。

 

プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

河合拓氏_プロフィールブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

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