#12 新型コロナ感染拡大が促す「脱リアル店舗」という競争の新局面
生協がリードしてきた日本の無店舗販売

これまで日本の無店舗販売をリードしてきたのは生協でした。1970年代から週1回、3人以上1組の「班」に商品を届ける共同購入を事業化し、専用の配送センターなどのインフラに投資してきた。共同購入という形態は廃れつつあるものの、すでに構築された配送インフラを使って、組合員宅に商品を直接届ける個別配送に主力事業を転換。全国123の地域生協の18年度の宅配事業供給高は総額1兆8130億円(店舗事業供給高は9027億円)に及び、生協だけで英国のネットスーパー市場に匹敵する額を稼ぎ出しています。
北海道でも、コープさっぽろの「トドック」が道内全域をカバーし、年間事業高900億円弱、経常利益率9%台と他を寄せ付けない強さを誇っています。その裏付けとなっているのが、積極的な設備投資です。18年夏には札幌近郊の江別市にある物流センターに8億5000万円を投じて自動倉庫「オートストア」を整備。ロボット70台が顧客ごとの注文商品を短時間でピッキングできるようになり、宅配で取り扱う商品数はそれまでの5000SKUから2万SKUに拡大しました。これはコープさっぽろのフード&ドラッグ店舗の売上額の95%をカバーする商品数です。
インターネットのない時代から存在する生協の宅配は長年、紙の注文用紙を商品の配達に来た担当者に直接渡すという注文方法が取られてきましたが、近年は各生協ともネットで注文できる仕組みを取り入れています。コープさっぽろは昨年、スマートフォン用の「トドックアプリ」を開発・配布し、会員登録から毎週の注文までをスマホで行えるようになりました。ほかにも、ビッグデータを活用して配達コースの最適化に取り組むなど、最新の情報通信技術を駆使し、競争力を強化し続けています。
オカドと電撃提携したイオン 北海道市場でどう動く?

このように北海道の無店舗事業はコープさっぽろが抜きん出た状態ですが、気になるのがイオン北海道の動向です。
同社が10年に開始した「ネットで楽宅便」は、イオンリテールが本州などで手掛けるネットスーパーとは、別スキームで展開されています。最大の違いは配達エリア。通常のネットスーパーが、起点店舗から半径5キロ程度までを配達範囲とするのに対し、イオン北海道はヤマト運輸と組み、100キロ離れた過疎地にも届ける仕組みに変えました。
起点店舗は札幌、旭川、釧路、北見など8店舗で、離島を除き、ほぼ道内全域をカバー。コープさっぽろの宅配は週1回の配達と決まっていますが、イオン北海道のネットスーパーは最も遠い地域でも午前9時までに注文すれば、当日中に商品が届きます。使い勝手という点で、なかなかいい線を行っているのです。
それだけに昨年暮れ、イオンがオカドと電撃的に提携したのは実に興味深いニュースでした。将来、オカド方式のFCが北海道に設けられれば、コープさっぽろにとってもかなり手ごわいライバルになるのではないか。
コープさっぽろとイオンが宅配やネットスーパー事業に積極投資しているのは、アマゾン・フレッシュの本格参入に先手を打つ意味合いがあるのでしょう。20年前、ウォルマート進出に備えようと各社が規模拡大に動いた結果、北海道市場の3極寡占化が進んだように、「脱リアル店舗」という新たな競争に向かう流れが着々と出来つつあるように感じます。
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