2024年度は増収減益のコープこうべ  再成長のカギに掲げる“生協らしさ”とは?

植芝 千景 (ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者)
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関西エリア最大の地域生協である生活協同組合コープこうべ(兵庫県/岩山利久組合長理事:以下、コープこうべ)の2024年度(25年3月期)連結決算は、増収を確保したものの利益は大幅に減少し、事業環境の厳しさが鮮明となった。こうした状況下、コープこうべは地域に根ざした活動や組合員向けの独自サービスを拡充し、他社との差別化を図っている。25年度は基幹システムの刷新など大型投資を計画し、協同組合ならではの役割を再定義しながら、持続的な成長をめざす考えだ。

コープこうべ シーア
コープこうべ シーア

24年度連結決算は増収減益で着地

 コープこうべの24年度連結決算は、全体供給高(商品売上高に相当)が対前年度比0.1%増の2703億円と微増で着地した。一方、経常剰余金(経常利益に相当)は同29億円減の32億円、当期剰余金(当期純利益に相当)も同42億円減の6億円と、前年度を下回った。
 利益の大幅減少は物流費、人件費などの事業運営コストの上昇が響いたためである。商品単価の引き上げにより売上は一定の水準を維持したものの、それを上回るコスト増加分を吸収しきれなかったかたちだ。

 事業別供給高では、宅配事業が同0.2%増の1245億円、店舗事業が同0.3%減の1155億円だった。宅配事業は、新型コロナウイルスの影響によって定着した新たな生活様式を背景に、組合員の利用頻度が増加していることが奏功した。一方、店舗事業については、店舗改装休業などの影響により、減収となった。

生協ならではの付加価値を追求し、他社と差別化

 コープこうべでは現在、店舗事業の競争力向上をめざし、既存店の強化を図っている。たとえば24年8月に新装開店した「コープ伊丹」(兵庫県伊丹市:以下、伊丹店)では、プライベートブランド(PB)である「コープこうべ商品」の供給高構成比を、26.4%(全店平均)から約45%へと大幅に引き上げた。近隣店舗の閉店で「コープこうべ商品」を求める需要が高まったため、伊丹店ではPB比率を大きく引き上げることで、組合員のニーズに応えたかたちだ。

 さらに「コープ西宮東」(兵庫県西宮市)や「コープ神吉」(兵庫県加古川市)でも改装を実施。総菜・カットフルーツといった若年層のニーズがとくに高い商品の充実や、売場でのメニュー提案など新たな商品政策(MD)を導入した。両店舗ともに改装後は20~50代の客数、買上点数が増加。今後はこの2店舗をMDのモデル店舗としていく計画だ。

 宅配事業では“買物支援事業”への転換を加速。個配、店舗送迎、夕食宅配など複数サービスの拠点を統合し、宅配センターの機能を強化する。1つの事業所でさまざまな買物支援を提供することで、組合員の多様なニーズにきめ細かく応える体制を構築している。

 また、関西エリアに他地域からの食品スーパーが続々と進出するなか、コープこうべは価格訴求ではなく、“生協らしい”価値訴求を推進していく。具体的には、PB拡充や組合員への利益還元、売上の一部を子ども食堂や奨学金など地域活動の原資とする仕組みの周知を進め、差別化を図っていきたい考えだ。

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記事執筆者

植芝 千景 / ダイヤモンド・チェーンストア 編集記者

同志社大学大学院文学研究科(国文学専攻)修士課程修了後、関西のグルメ雑誌編集部を経て、ダイヤモンド・リテイルメディアに入社。関西小売市場やDX領域を中心に取材・執筆を担当している。現在は大阪府在住。

まとまった休日には舞台・映画鑑賞を楽しむほか、那智勝浦へ弾丸旅行に出かけることも。世界各国の家庭料理を再現するのも趣味のひとつだが、料理に入れたスパイスで歯が欠けたので今は控えめに取り組んでいる。

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