2019年9月に発生した台風15号は千葉県を中心に強風による被害をもたらした。さらに翌月、台風19号は豪雨を伴い、中部~東北地方まで広範囲にわたり爪痕を残した。異常気象、自然災害の発生が“当たり前”になりつつある今、「社会のインフラ」として役割を果たすホームセンター(HC)各社はどのように対策しているのだろうか。
東日本大震災以降
災害対策をアップデート
カインズ(埼玉県/高家正行社長)の防災対策は、2011年3月の東日本大震災の反省が土台となっているという。震災後に整備を行った災害マニュアルを段階的にアップデートし、対応準備を行っている。
対応をスムーズに進めるためのコンセプトとして、店舗と本部の連携に力点を置く。店舗には裁量権を持たせることで、お客、従業員の安全を最優先に考え、本部からの指示を待つのではなく、営業を続けるか閉店するかという判断ができるようにしている。一方、本部サイドは店舗からの報告を待つのではなく、積極的に店舗側の情報を取りにいくことで、いち早く現状を把握し、対策を講じることができる体制を整える。
被害がある程度大きいと予想されると、「緊急対策本部」が立ち上がる。販売本部が情報対策事務局となり店舗の情報を一元管理すると同時に、人的対応(従業員安否確認や人的応援対応など)・お客様対応・商品や緊急物資手配対応・店舗設備 レジ TIなど各種インフラ整備対応・官公庁、マスコミ対応などを本部各部の責任部署が緊急体制で取り組む。台風15号の際は上陸の翌朝に緊急対策本部を立ち上げた。
情報の一元化には、社内イントラ、電話、社内SNSを活用。カインズでは「Yammer(ヤマー)」(マイクロソフト社)という社内SNSを活用し、台風15号、19号の情報共有で活躍した。
台風15号、19号で迅速な対応
本部と店舗で情報連携
台風15号のときは、まず被災地域で営業の可否の判断が求められた。営業を続けることで「社会のインフラ」として地域住民に貢献するという側面がある一方、お客、従業員の安全を最優先に守らなければならない。台風15号は風の影響により広範囲で停電が続いたため、電気が復旧するまで6店舗を営業停止にした。
台風19号の際は、事前に規模が大きいことが予測されたことと、15号の対応が続いていたため、緊急対策体制を維持し続けた。「15号と19号でほぼ同じメンバーで臨むことができたため、19号では15号での経験も活かし、店舗・本部とも役割ごとに各メンバーが自律的に対応にあたることができた」と緊急対策本部長の根岸充氏は振り返る。
19号は豪雨災害の特色が強く、川の氾濫により、想定以上に内陸部の被害が大きかった。被災エリアの店舗では、上陸した当日の午前中には営業停止の判断を下した。翌朝からはのべ200人の本部メンバーが現地に応援に入り、復旧作業に取りかかった。
最終的には、55店舗で営業を停止したが迅速に営業を再開、3店舗が閉鎖。閉鎖店舗のうち「カインズ大平店」(栃木県栃木市)は12月18日に営業を再開した。
根岸氏は「店舗メンバーは自分たちも被災者でありながら、地域住民の安全のために最善を尽くしてくれた。本当に頭が下がる思い。今回の学びと反省を踏まえ、今後の自然災害により迅速に対応できるよう、本部が責任をもって仕組みの改善を進めていきたい」と語った。
※台風15号、19号のHC各社の対応は『ダイヤモンド・ホームセンター2月15日号』で詳細にレポートしています
ダイヤモンド ・ホームセンター2020年2月15日号 「コーナン商事 本気で業界トップとるんや!」