アパレルのいまを全解説!GU、しまむらとシーインを比較してはいけない理由

河合 拓 (株式会社FRI & Company ltd..代表)
Pocket

しまむら、GU VS シーイン・TEMU

シーインをはじめとする中国企業が、先進的なテクノロジーを活用し、日本企業の度肝を抜くことになるだろう
シーインと日本の低価格型アパレルを比較してはいけない理由とは?

Q10 一方、総合スーパー(GMS)の衣料品は改善に向けた動きは進むものの抜本的とは言い難い。GMS衣料品の課題は何か?どうすれば解決できるか、どんな選択肢があるか?

河合 GMS向けのアパレル商品は、全く差はありません。生産している商社もほとんど同じです。それでも、勝ち組と負け組を分かつものは、店内立地とVMDなどです。非常によい場所に大きなスペースをもって見栄えもよければ売れる。この意味で、アダストリアは頭一つ抜けています。

Q11 SHEIN(シーイン)、TEMU(テム)の日本での状況とアパレル各社への影響、対策。

河合 あくまでも私の想像ですが、シーインはすでに日本で4-5000億円の売上をあげている可能性があります。例えば、先月は、私の娘の結婚式だったのですが、大手広告代理店につとめている女性の島があり(私の娘は大手広告代理店勤務)、リッチな彼女たちがシーインで2000円で買ったドレスなどを自慢しあっていました。彼女たちは、「こういう写真の写り方をしている商品には外れがない」など、いわゆる「シーインアイ」をもっており、「外れ」を引く確率が低いのです。また、結婚式にきてゆくほどZ世代に浸透しています。

 これに対して、オジサン達は、適当に2-3枚買って、「履いたら縫製がメチャメチャだった」と結論づけ、それをもってシーインを語っています。

 Z世代の「シーインアイ」とオジサンの「適当購買」が生む、シーインに対するイメージのギャップは途方もないものです。だからオジサンには、シーインにお客が4000人並ぶのかが理解できないのです。

 私は今日、アジアから来日した20名ほどのアパレル経営者に対して講演をしたのですが、全員TEMUについて知っていました。「米国ではシーインがTEMUに負けた」という話をしたところ、みな非常に深くうなずいていました。

 日本では「トラッキング」という追いかけ型の広告にはTEMUがでるようになってきましたが、売上が伸びるのはまだまだこれからというところでしょう。

 いずれにせよ、残反、残品をネームを替えて売っているだけなので、このあたりの激安中国アパレルはどこで買っても一緒。Z世代の女子が鍛えた「シーインアイ」があれば問題ないわけですから、結局は売上を日本でも大きく伸ばしていくでしょう。

Q12 日本における低価格アパレル市場の可能性と勝者。GU、しまむら、ハニーズ、パシオス、ワークマンなどのゆくえ。

河合 GU、しまむら、ハニーズ、などの低価格ブランドとシーイン、TEMUを一緒に比較してはなりません。シーイン、TEMUはもう一段、いや2段ほど価格は低く、マーケットも商品もまったく異なります。私の想定では、ユニクロが高価格帯アパレル。GUはプライスアンブレラ(価格基準値)、シーインが低価格ブランドという具合になるでしょう。

Q13 日本における低価格型アパレルは、グローバルベースでは安いとは言えないが、グローバル展開は可能か?その時採るべき戦略は?

河合 Q12で回答した通り、GU、しまむらなどはグローバルでみて低価格ではありません。したがって、日本で中価格帯アパレルが採ってきた戦略が必要になります。海外ではユニクロが高価格帯の戦略を行っているのと同様です。

 

河合拓氏の新刊、大好評発売中!
知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!

話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!

 

 

プロフィール

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

 

1 2 3 4 5

記事執筆者

河合 拓 / 株式会社FRI & Company ltd.. 代表

株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)。The longreachgroup(投資ファンド)のマネジメントアドバイザを経て、最近はスタートアップ企業のIPO支援、DX戦略などアパレル産業以外に業務は拡大。会社のヴィジョンは小さな総合病院

著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「生き残るアパレル死ぬアパレル」「知らなきゃいけないアパレルの話」。メディア出演:「クローズアップ現代」「ABEMA TV」「海外向け衛星放送Bizbuzz Japan」「テレビ広島」「NHKニュース」。経済産業省有識者会議に出席し産業政策を提言。デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言

筆者へのコンタクト

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態