アパレルのいまを全解説!GU、しまむらとシーインを比較してはいけない理由
アパレルを変えるAIだが、販売予想はできない
では何に使うのか?
Q6アパレル・小売に関連したテクノロジーで注目しているものは何か?それは業界をどう変えるか?
河合 AIです。AIは登場時、MDと結びつけて「将来のこと(販売数量)がわかる」という触れ込みで、期待感が一気に高まりました。私も当時、AIベンダー側にいたからわかるのですが、「AIで読むMDの世界」は、どこか神秘的で、さらに科学の下支えもありました。だから日本中のアパレルがこれに飛びついたのです。経済産業省の有識者会議にでたときは、司会者の大学の教授までもが「AIをつかって余剰在庫を減らす」などいいだす始末でした。
私はそんなとき「ではあなたは、来年ユニクロが何を出すのかわかっているのですか?競合が同じ商品を高コスパで出したらどうするのですか」と発言しました。この正論を言って以来有識者会議に呼ばれなくなったのですが、いくらAIを使っても商品力の差があれば、売れないのです。だからAIを使っても余剰在庫はなくならないのです。もしくは、悲しいほど少ない売上予想をAIがはじきだして終わりです。
アパレルがいかに正確に未来を予想しても、ユニクロが同じ商品をだせば一発で負ける。また、QRの得意なアパレルは2週間ほどで“パクり商品”(類似デザインの品)をすぐに作れます。こういうことをAIベンダーはわかっていないのです。
情けないのは、技術そのものにたいするリスペクトが無いということです。いわゆるMDの5適などは個社・個別ブランドによって全く違うため、競合の出方から昨年の余剰在庫などの戦略変数は無数で、過去の趨勢から読み出すAI搭載のSaaSでだせるものではありません。つまり、予想には使えないのです。
私がそもそもAIをMDに使えるといったのは、MDを組み立てる前の、「今の世の中のトレンド」を分析し、大きく市場の流れを捉えるためにAIを使えるという意味です。
これは市場調査と言って、これまではみなで大名行列のように穴場のスポットをぶらぶらあるいたり、イタリアやフランスに行って街をみたりしていました。こういうことを客観的にできるようになる、という意味です。MDの5適までAIで実現可能だなどとは一言も言っていません。
正しい使い方をすれば、個別のMDが違っても、その精度は格段にあがるのです。そのことをいくら言っても、会場からの質問は「AIを使うと日本中のアパレルはみな同じ商品を使ってしまうじゃないか?」という、がっくりするような質問をいう人がいまだにいます。AIを使った同じSaaS型MDを日本中のアパレルが同時に使うわけがないじゃないですか。
疲れ切った私は、いまではAIを使ったMDについて、聞かれなければ話さないようにしています。
話は変わりますが、メタバースの使い方も同様です。日本人は、技術だけに焦点を当ててしまって、そもそもそれを使って何をしたいのかが見えていない人ばかりです。
離れたスタッフ同士が会議をしたり、コストの関係で出店できない過疎地に住まう人のために出店するといったことをメタバース活用で考えるべきなのですが、いまだにドラゴンクエストのようなRPGをしようとしています。
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