流通再編の衝動最終章 流通はEC主導の再編時代を迎えるか
リアル店舗とECの融合の先に、新たな再編か
経済産業省の調査によると、18年のネット通販の市場規模は前年比8.96%増の17兆9845億円と高い伸びを示している。物販系分野のEC化率は6.22%とまだ低いが漸増傾向にあり、今後上昇していくのは間違いない。
このEC化率がすぐに30%、40%に高まることはあり得ないが、確実に上昇していく過程で、EC企業が次に着目するのは実店舗だろう。
実際、その前哨戦は始まっている。EC大手の楽天(東京都)は近年、小売大手と相次いで提携している。昨年は西友(東京都)にはじまり、ビックカメラ(東京都)とも共同でECサイトを立ち上げており、物流面での協業もはじまっている。ホームセンター大手のコーナン商事(大阪府)ともポイントで協業するなど提携が相次ぐ。
アマゾンが米食品スーパー大手のホールフーズ・マーケットを買収したことでも明らかなように、ECにはどうしても克服できない課題がある。それは、商品を最終ユーザーに届ける「ラストワンマイル」であり、扱いが難しい生鮮食品だ。EC企業は今後、それぞれ得意分野を持つ企業との提携に動くとみられている。
国内に目を向けると、食品スーパー最大手のライフコーポレーション(大阪府)とアマゾンがタッグを組み、都内の一部地域でライフの店舗から生鮮食品や総菜などを宅配するサービスを開始している。続報は出ていないものの、昨年2月にはイオン(千葉県)とヤフー、ソフトバンクの3社が提携を検討しているとの報道もあった。
ラストワンマイルを埋める拠点としてリアル店舗に魅力を感じるEC企業が増えている。他方、EC企業が持つビッグデータを魅力に感じるリアル小売も多く、今後、協業が増えていくのは間違いないだろう。
流通業界におけるネットと実店舗の融合は始まったばかりだ。ヤフーによるZOZO買収はEC大手が激しい競争へ向かう狼煙とも考えられる。今後はEC企業を軸とした流通再編が進むのかーー。ECの競争激化が流通を再編へ駆り立てようとしている。