カインズ(埼玉県/高家正行社長)は、大手メーカー19社とのコラボ商品を集めた「カインズデザイン展 Vol.3」を開催した。東京ミッドタウンには3日間限定の「ポップアップショップ」をオープン。デザイン展該当商品の展示販売とDIYワークショップを実施した。
PBとNBを「調和」する
「カインズデザイン展」は、「毎日のシーンをたのしく」をテーマにデザインを通して暮らしを提案するイベントで年間2回の開催。カインズと日用雑貨品メーカーのコラボレーションによる暮らしのデザインプロジェクトだ。
第1回目の開催は2018年。商品構成比率の10%、売上構成比率の40%を占める「自社開発商品」とナショナルブランド(NB)商品の住空間における「調和」を意図している。
さて、カインズの歴史を振り返ると創業は30年前の1989年。当初は、“For the Customers”の経営理念の下、「良いものをより安く」提供するため、NBの仕入れ販売を軸に低価格政策を進めてきた。しかし、仕入れ販売一辺倒では、差別化が図れないと1999年からオリジナル商品の開発をスタート。2007年には「SPA(=製造小売)企業化」を宣言し、「カインズでしか買えない商品」の開発に舵を切り、機能性やデザイン面でも商品力の強化に注力してきている。
「カインズデザイン展」は、自社開発のオリジナル商品同士のコーディネートが提案できるようになった中でNBについてもこれを実現したいという考えから始まった。
「NBは棚の中で目立たせなければいけない側面があるから、“売るためのデザイン”が必要かもしれない。しかし、ファンの多いブランドであれば、もはや“売るためのデザイン”はそこまで重要ではないかもしれない。だから、それを一旦置いていただき、当社のオリジナル商品とマッチするように、デザインを再考いただけませんか、とお願いした」とカインズ土屋裕雅会長は説明する。
第3回目では、「調和」とともに、自分らしくひと工夫加えたり、パッケージに遊び心を添えるなど、暮らしを楽しくする提案の幅を広げた。
商品をいくつか紹介すると…。
「P&G ファブリーズ 除菌スプレー」(398円〈税込〉):写真①
通常のデザインではなく、白いボトルに銀の縁取りされたビンテージ調のタイポグラフィ。モダンな印象でどんな空間にもマッチするシンプルデザイン。
「アサヒビール スーパードライオリジナルパック」(1180円〈税込〉):写真2
基本構造は六角形の箱に6本のビールを入れる。天面と側面に星型の抜き穴があり、ビールを取り出しスマートフォンをライトモードで投入すると星型のライティング投影が可能になる。
「モンデーズ オリジナルミントボトル ポーチセット」(998円〈税込〉):写真③
アウトドアでも持ち運びできるように、撥水加工されたボトルガム用巾着ポーチをつけたお得なセット。
なお、ポップアップショップのオープンと平行してカインズの約140店舗でも17日間にわたって、展示商品が販売され、好評を博した。
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カインズがねらう、「ずらした戦い方」とは!?
INTERVIEW 石橋雅史 カインズ商品本部 日用雑貨事業部長
「メーカーとがっちり組みたい」
――今回で「デザイン展」は3回目になる。商品の販売動向はどうか?
石橋 実は、「デザイン展」のもう1つの狙いは、いままで当社としてそれほど強くなかった層のお客様の獲得にあります。まだまだ胸を張れるだけの結果は出ていませんが、若い方々が進んで手に取ってくれており、一定の成果は見え出しています。
――製造小売業を志向するカインズにとって、メーカーの営業部門以外の方と接点も持てる。
石橋 そうです。従来は、メーカーさんの営業マンと当社のバイヤーとの商談中心の付き合いばかりでした。しかし、その他の部署の方の視点やアイデアは、いろいろな意味で参考になります。しかも、それが商品に反映されています。
――製造小売業であるカインズとNBメーカーとはむしろライバル関係にあるのではないか?
石橋 日用雑貨品分野でもPB(プライベートブランド)を開発していますが、大手メーカーさんと真っ向勝負して勝てるわけがありません。たとえば、洗剤などのケミカルな領域は分子レベルまで研究して開発投資しています。だからそことPBでNBと戦うといった発想はなく、メーカーさんとがっちり組んでやっていきたい。
当社のPB商品とは異なり、自分たちだけではコントロールできないのが日用雑貨NBの特性です。デザインをブラッシュアップして、価値をあげて、価格はできれば下げたい。トータルとして商品価値は上がるでしょう。
――「デザイン展」が定着してくると、他の流通業もメーカーと組んで同じような商品を出してくる。
石橋 そこで、さらにカインズらしさとはなにかということを今考えています。たとえばパッケージに自分でペイントするというようにDIY的要素を織り込むというようなことです。そういうのがカインズらしさであり、他社ではできないことだと思います。
土屋会長が良く口にするのは、「ずらした戦い方をしよう」ということ。同じNB商品を低価格一辺倒で販売していては、我々も利益を手元に残せません。そこでたとえば、大容量商品を当社向けにつくっていただきユニットプライスで優位性を出そうとか。何かおまけをつけたりして、価格を維持するとか、そういうずらした戦い方もしていきたい。(談:文責・千田直哉)