コーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長:以下、コーナン)のプロショップ「コーナンPRO」が快進撃を続けている。1号店の「コーナンPRO東淀川菅原店」の開業が2001年1月。以後、着実に出店を重ね、2019年2月末の店舗数は75店舗。連結の売上高は505億7000万円(対前期比21%増)とホームセンター(HC)事業に次ぐ第2の核事業として、「全社2025年5000億円」体制に向けての同社の成長エンジンになっている。
試行錯誤の赤字事業に耐える
2000年ごろを境にコーナンのHC店舗には、仕入れのために立ち寄るプロの業者が散見できるようになった。それまでの仕入れ先であった材木店や金物店が店を閉じ、その代替機能をHCに求めたためだ。
そこで大阪中心部に実験的に出店したのが「コーナンPRO東淀川菅原店」だ。
とはいえ、当時のコーナンは、プロに関する知識もノウハウもほとんど持っていない徒手空拳状態。結局、この分野に強いHC企業の品揃えをそのままコピーする形で1万8000アイテムを集積し「コーナンPRO東淀川菅原店」は船出した。
けれども、全く売れない。
それもそのはず。一般消費者とプロ業者が要望する商品はハナから違っていたからだ。
根気よく接客を重ね、プロ業者の声を細かく拾っていくことで、既存の8000アイテムを廃止し、代わりに付け足しながら4万1000アイテムの品揃えにした。
それでもコーナンPROは事業としては数年間赤字状態だった。
「当時はHCが順調な時期であり、普通ならやめている。どうしてやめなかったのかはわからないようなところがある」と疋田社長は振り返る。
しかし社内には、新規事業を必ず成功させる決意と夢と情熱を持って、推進した担当者たちがいた。
「建築業界は一見の付き合いではない世界だから、これまでの購入先からうちへ変えてもらうのは簡単なことではないと腹をくくった。3年はかかると覚悟を決めた」(竹内英吾コーナンPRO事業部長〈当時〉:現 取締役上席執行役員 経営企画部・EC営業部担当)。
3年後の売上高目標を10億円に据えた「コーナンPRO東淀川菅原店」は、従業員による地道な要望聞きだしと品揃えに努める。その結果、3年目には年商14億円を計上するに至った。現在、オープン18年目を迎えるが、いまだにプラス成長を続けているという。
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コーナンPROの強みと建デポ買収のその先
コーナンPROの強み
コーナンPROの商売の肝は、プロ業者とのコミュニケーションにある。最初は「何も揃っていない」と不満を見せるお客の要望を飽くことなくじっくり聞きだし、即座に品揃えとして具現化する。当然、店舗ごとに品揃えは異なることになる。その繰り返しによって、お客との信頼関係を構築。やがて口コミでファンは増えていく――というものだ。
もうひとつのコーナンPROの強みは技能社員だ。ハウスメーカーや建材メーカーで働いた経験を持つOBを主体にして1店舗に10名弱が在籍する。
職人であるプロ業者は、従業員に付くことが多い。だから、同社の従業員は名刺を配ったり、名前を覚えてもらうことに専念している。
疋田社長は、「コーナンPROが実践しているのは接客ではない」と言う。「むしろ従業員はお客様に教えていただいていることが多い。お客様のほうが商品に詳しいので、要望があったものを即座に揃えるようにしている」(疋田社長)。
その一方で、建材屋や材料屋では当たり前の現場納品サービスや掛売りはいまだに行っていない。
幹線道路沿いでプロ業者の移動距離範囲に店舗があればそれほど大きな問題ではないという考えからだ。掛売りでは、「コーナンPROビジネスカード」を発行して、最長約3ヶ月の支払い猶予を持たせている。
「配達や掛売りサービスを提供すればさらに売上は上がるかもしれない。しかしながら、コストはプッシュされるので儲かるかどうかは分からない」(疋田社長)。
プロ業者の動きで読み違えたのは、ポイント付与についてだ。当初、プロ業者がポイントを集めるために来店するとは思いもしなかったが、蓋を開けてサービスを開始してみれば、意外にも収集しているお客は多いという。
建デポ買収で東西日本制覇へ
今後、コーナンはコーナンPROの出店を加速する。2019年2月期に出店した22店舗中実に11店舗がコーナンPROだ。2020年2月期も7店舗をオープンする計画である。
ホームセンター市場の規模は、過去10年にわたって4兆円目前で足踏みしている。各社各様に次期成長に向けて新フォーマットを打ち出してはいるが、大きな成功を収めているところは少ない。そのなかにあってコーナンPROの躍進は注目に値する。
さらに、この4月23日にコーナンはLIXIL(東京都/大坪一彦社長)傘下の建デポ(東京都/斉藤泰社長)を約240億円で買収すると発表した。
建デポは、プロ客向けの会員制建築資材卸売店舗「建デポ」を首都圏中心に展開。2018年3月期の売上高は337億3200万円(対前期比0.5%増)、当期純利益は10億4500万円の赤字だった。コーナンは、自社の商品企画力、販売力、物流、システムなどの経営ノウハウを注入、融合することで、首都圏での事業基盤強化を図り、シェアアップに乗り出す。
「67店舗中41店舗が関東圏。当社も関東に店舗はあるがコーナンの知名度はそれほど高くないと認識している。だから苦労してきたわけが、これを勝機ととらえて、相乗効果を図っていきたい」(疋田社長)。