脱スーツではなく、スーツ注力で黒字化!青山商事、業績回復引っ張るオーダースーツ戦略とは
麻布テーラーを買収、オーダースーツ戦略に厚み
再び、話題をオーダースーツに戻そう。青山商事では「SHITATE」を導入したオーダースーツ対応店舗を、2022年度内に450店舗に増やす計画を立てている。単価が既成スーツの約1.8倍であるオーダースーツの構成比を高め、さらなる売上向上を図る構えだ。
しかし、オーダースーツの接客対応には、採寸や各スペックの説明など、既成スーツ以上に膨大な商品知識が求められ、販売スタッフの育成に時間がかかる。「スタッフの研修を同時並行で進めながら少しずつ店舗を増やしている状況」(長谷部氏)であり、無理な拡大は行わない方針だ。
これら「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE’S」「SHITATE」の青山商事のオーダースーツラインに、強力な“ピース”が加わった。2022年4月に買収した「麻布テーラー」(旧運営企業:エススクエアード)だ。
「高い認知度と、一定の根強い顧客層を持っている麻布テーラーが加わることで、当社にとって空白だった高額ゾーンを強化し、オーダースーツ戦略に厚みを持たせることができる」(長谷部氏)
1964年の東京五輪日本選手団のブレザーを手掛けるなど、長年にわたり培ってきたテーラリングや接客技術を持つ麻布テーラーのノウハウを、グループ内で横展開していくことも今後は期待される。エントリーラインから高級ラインまで、オーダースーツのフルラインをそろえたことで、将来的にはスーツ総売上に占めるオーダースーツの構成比を50パーセントにまで高めるビジョンを描いている。
最大のボリュームゾーンだった「団塊の世代」が続々とリタイアし、加えてコロナ禍も長期化の様相を呈するなど、紳士服業界への逆風は依然として厳しい。しかしながら、ニーズの多様化による新たなビジネスチャンスも生まれている。業界のリーダーである青山商事の挑戦に引き続き注目したい。
「根底にあるのは、当社はあくまで『スーツ屋』であるということ。長年培ってきたスーツの縫製技術を強みに、オーダースーツはもちろん、ビジカジやレディースウェアなど、多様化するビジネスウェアのニーズに応えていきたい」(同)