ファーストリテイリングが進める、情報製造小売としてのDX 戦略とは
「ムダ」のないバリューチェーン実現へ
日本のアパレル業界は、コロナ禍以前より点数ベースで供給が需要を上回る状態が続いており、需給バランスは年々悪化していた。コロナ禍により一定の調整はあったものの、「モノをつくり過ぎている」という構造的な問題は解決しておらず、アパレル事業者のみならず地球環境にとってもサステナブル(持続可能)な状態とはいえない。
こうした業界が抱える課題に対し挑戦を続けるのが、「ユニクロ」「GU」などのファストファッションブランドを展開するファーストリテイリング(山口県)だ。同社は2017年以降、「顧客が欲しいものをいつでも手にすることができる状態」をつくり上げるためのビジネス変革に取り組んでいる。
具体的には、「無駄なものはつくらない」「無駄なものを運ばない」「無駄なものを売らない」というバリューチェーンの実現をめざし、それに向けたビジネスモデルの変革を「有明プロジェクト」と称して、「情報製造小売業」というビジョンを示してきた。その本質は、できるだけリアルタイムにトレンドや生産・販売状況、顧客の声をインプットし、企画・生産・物流・販売という一連の企業活動を最適化するというものである。それを実現する手段として、デジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)が必要だというのが同社のスタンスである。
各プロセスにおけるデジタル化の進展
ここからは同社のデジタル化の取り組みについて、各バリューチェーンに沿ってその進展具合を追っていきたい(図表)。
アパレルの商品企画段階においてしばしばボトルネックとなり得るのが、