第50回 アフターコロナに取り組むべき「課題解決型ショッピングセンター」とは何か
コロナ禍にあっても売上好調だったショッピングセンター(以下、SC)があった。その好調を維持した要因は他でもない、これまで商圏をどれだけ重要視してきたか、これに尽きる。一般的にマーケティング理論を学ぶ際、その主たるテーマが消費財にあることから、あまり商圏について学ぶ機会はなく、3km、5kmといった狭域な商圏設定について学ぶことはなおさら少ない。だが、SCは不動産であり簡単に移動できない装置産業である。したがって商圏がすべての鍵を握っている。前回はSCのシビックプライドを主張したが、今号ではSCの商圏との向き合い方を解説する。

「何が売れるか」「どうやって売るか」より先に考えるべきこととは
SC事業に携わる人との会話は、「前年比」からスタートすることが多い。「95%」と言えば前年比のこと。時々予算比の時もあるが、ほとんどの場合、昨年に対しての数値となる。ただ、最近はコロナ禍前の2019年と比べた比率がテーマになることも多い。
この前年比は流通系の業種に限らず多くの企業のKPIとなる。理由は、分かりやすく、状況を把握しやすく、施策が功を奏したかどうか判断しやすいからだ。KGI(重要目標達成指標)を売上高に置く限り、前年比がKPIとして設定されるのは必然である。
そのため、SC事業者は、日夜「何が売れるか」「どうやったら売れるか」を考えることになるが、ここに商圏との向き合い方を考えるポイントが隠れている。
では、そのKGIである売上高達成に向けたKPIとは何か。一番分かりやすいのは、売上の構成要因である「客数×客単価」。この2つは数値化が可能であり、KPIに設定するものとしてふさわしい。
それでは、この2つのKPIをマネジメントするために必要なものは何か。「何が売れるか」「どうやって売るか」、この2つになるのだろうか。
確かに考え方としてこの2つであれば施策が打ちやすく、マスマーケティングを前提にMDと販促と接客のプッシュ型を繰り返せば、何らかの効果も出るし、担当者も「やった感」もあり、やりがいも感じやすい。しかし、この「何が売れるか」「どうやって売るか」より先に考えることがある
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