圧倒的に低い原価率が容認される秘密 知られざる外資スーパーブランドのビジネスとは
検品1つとっても大違い!外資メゾンがみる意外なポイント
外資トップメゾンと日本では、あらゆる部分が異なっている。例えば、今では98%以上が海外生産となっているアパレル製品だが、その検品方法は全く違っていた。私は、外資のメゾンが行う最終検品に立ち会ったことがあるが、彼らはマネキンに完成品を着せ、「格好よいか否か」で最終ジャッジをする。もし、イメージと異なる場合、はじめてメジャーをだして、例えば「身幅を3cmつめましょう」など、修正をくわえてゆく。これに対し、日本のデザイナーと海外の工場に出張にゆくと、必ず彼ら、彼女たちは「メジャー」を出し、「首回り」から、「身丈」、「裄丈」など決められた順番に置き寸で図りにゆく。最後に、確認でマネキンに着せて終了だ。
「一長一短」ではないかという人もいるかもしれないが、そうだろうか。日本のアパレルのデザイナーは「売れそうか否か」でなく、発注したスペック通りかどうか、数ミリ単位でケチをつけてくる。例えば、ニットのような素材特性や編み方によって全くサイズがかわるような商品にミリ単位の制御は不可能だ。ここにはあうんの呼吸があって、検品工場は商品に蒸気を当てて伸ばしたり引っ張ったりして先上げ検品(全量検品をすることが時間的に不可能なので、抜き打ち検品をする)だけをジャストサイズにする。そんな茶番劇が繰り広げられている。
売れないときの責任転嫁がしたいからか。あるいは本当に、世にでてもいない商品が(机上の)採寸通りに商品が上がれば 、なぜ売れると心から信じられるのか。彼ら、彼女らの仕事は「サラリーマン仕事」にしか見えず、外資のやり方(全体の雰囲気をみて、採寸通りでなくても格好良ければ、それで押し通す)ほうが理にかなっているように思えた。
トレンドを押さえる、追いつく ではない
トップメゾンが取る戦略とは
さらに、決定的なのはトレンドへの対応である。
当時から、トレンドに関する議論はあちこちでなされていたが、大きく流派は二つに分かれていたように思う。「トレンドの先端はパリ、ミラノ、ニューヨークの三大都市であり、そこで紹介されるトレンドの大元を押さえることが、ファッション・ボラティリティ(不確実性)を予想する最善解だ」とばかりに、シーズンになれば徒党を組み、欧州や米国に出張に行く。もう一つは、「ファッションなど変数が多すぎるため予測は困難。ならば、ヒットがわかった段階で、思い切りスピードを上げて生産し商品在庫を十分に積めば良い」という考え方だ。いうまでもなく、後者がQR(クイックレスポンス)に進化し、メジャーになっていった。なぜなら、コレクション(2年前のものになる)はあまりにアブストラクト(抽象的)で、具体的な商品に落とすにはあまりにコンセプチュアルだからだ。
一見この二つは、MECE (漏れなく、ダブりなく)であるように見える。しかし、欧米のトップメゾンは違う。彼らは、第三の道を選択しているのである。それは、「ファッションを予想しようとするから迷宮入りする。ならば、格好良いものをこちらから作り、トレンドを牽引してしまえば良いではないか」という考えだ。
つまりクリエーションという作業、つまり0を1にする作業は、トップメゾンのみが行っているわけだ。あとは、1を1.5にするとか、いずれにおいてもデータベース・ドリブンによる科学的分析手法が世界の大多数を占める。
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