新しい総合化をめざす
急速成長の基盤づくり
前回の連載で述べた赤字部門の改革は急務だ。競争の真っただ中にそれに時間を費やすと致命傷になるからである。現状の問題点の確定から、一挙に既存フォーマットの再構築まで突き詰めたい。そのための方針を今から明確にせねばならないのだ。
フォーマット再構築とは、商品とサービスを提供する生活者の買物のTPOS(時間、場所、場面、スタイル)に合わせて、①商品部門構成、②購買頻度、③価格帯、④品質のレベル、⑤生活提案の方向性、⑥適正規模などの個別の条件を、お客にとって最も便利で、自社にとって効率のよいかたちで同時に突き詰めることだ。
しかも最大限の相乗効果を発揮し、発展性のある組み合わせになるように決めるのだ。それが急速成長の基盤づくりになるのである。
既存フォーマットは自社のこれまでの発展に大いに貢献した。しかし同一フォーマットで多店化する企業が増え、自社も他社もそれぞれが店数を増やしたために、オーバーストアでこれ以上同じフォーマットの店を増やせない。
加えて後発フォーマットが既存フォーマットの弱点を突いて、客層が広く購買頻度の高い主力商品部門に割り込んできたため、フォーマットのかたちを変えねば生き残れなくなっている。既存フォーマットは疲弊して、寿命を迎えているのである。
フォーマットがお客の暮らしに定着し、ライフサイクルの一環に取り込まれるためには、上記の条件設定の後、徹底してデプス(depth)を突き詰めることが重要である。言い換えると例外を認めない、つまり専門化することなのだ。
続いてこれまでの既成概念を無視して、めざす暮らしのTPOSに必要な品種を総合化する。これはウイス(Width)の追求である。その技術は“ラインロビング”だ。専門化と総合化を新たな視点と独自の組み合わせで確立した後、全商品部門で最も客数の多い商品ライン(特定の狭い価格帯=低い価格帯)だけを抜き出して、それのみを扱う手法である。これは、競争に勝ち抜くために最も効果的な技術とも言える。なぜなら、その商品ラインはお客にとって最も人気の高い価格帯だからである。その結果、他社からその人気の商品ラインを略取(robbing)することができるのだ。
ようやく競争が始まった日本のスーパーマーケット(SM)業界で最近勢力拡大中の企業は、ラインロビングの技術を用いて低価格帯の商品だけで品揃えをするディスカウンティング・フォーマットである。安いものからデパ地下をモデルにした高級食品まで扱う価格帯の広いSMは、ディスカウンティング・フォーマットに太刀打ちできない。なぜなら、お客に最も人気の高い低価格帯の品揃えのみを比較すると、ほかに高い商品も扱っているぶん、売場面積が狭いし、選択肢も陳列量も少なくなるからである。
同質化からの脱却を図る差別化対策
実のところ既存フォーマットは