増収黒字転換のJ.フロント、23年2月期は守りから攻めへギアチェンジ 巨額の投資戦略とは
ラグジュアリーなど強みの領域に投資
好本社長は今後の事業戦略について「百貨店ではラグジュアリー、高級時計、アートが好調で、この強みである領域に積極的に投資をしていく。そしてリアルとデジタルを掛け合わせながら、当社らしさを発揮する」と方向性を示した。
重点カテゴリーの強化では、実際に大丸神戸店ではラグジュアリーと時計売場を拡張し、昨年7月に従来の外商サロンをラウンジとして新設。今年3月には「ルイ・ヴィトン」が周辺に神戸の2店を1店に集約する形で3層展開に大幅に拡充し、オープンした。
ラグジュアリーブランドを集積した東京・銀座のGINZA SIXでは20代、30代の若者の購買が活発で、かつてはインバウンド(訪日外国人客)需要が3割近くあったにもかかわらず、昨年12月の全館売上高はコロナ前の19年度を上回り、過去最高記録となったという。今期も基幹店のプライムコンテンツの重点強化に取り組む。
リアル店とデジタルの融合(OMO:Online Merges with Offline)では、今年3月にコスメの「デパコ」がコマース機能を付加しOMOサイトとして生まれ変わった。同1月に立ち上げたアートの「アートヴィラ」も好調な推移を見せている。外商客向けサイト「コネスリーニュ」は「売上はまだ数億円規模だが、今後幾何級数的に拡大するのは間違いない」と好本社長は期待を寄せる。
今後、他領域にもサイト展開を拡充し、オンライン経由売上高は23年度に400億円を目指す。またオンラインとオフラインでの品揃えの拡充と店頭サービスの強化で、外商売上高は早期に2000億円規模に拡大したい考えだ。
一方で、好本社長は「インバウンド消費はいつか必ず戻って来ると思っているが、当初想定よりも回復は後ろにずれる。するとこれまでの重点アイテムや売り方に頼っていては厳しい状況になる」として、現在の成長カテゴリー以外の領域に布石を打つことも必要だとの認識を示した。また「中級価格帯の商品群が厳しい。どう対応していくかという見極めがこの数年間で求められてくる」とも語った。
松坂屋名古屋店の大幅改装は23年以降に実施する考えだが、19年9月に定期借家契約(定借)を大幅に導入した大丸心斎橋店方式を取り入れることについて「百貨店型のマーチャンダイジングを定借に置き換えるだけでは難しい。現在の成長カテゴリーやアイテム以外のところで、もう少し違った仮説が必要だ」と話した。