ライフ、ヤオコー、サミット、有力SM3社のトップが語る2022年の展望とは?
取材・文:
大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)、
小野 貴之 (ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長)、
雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)、
森本 守人 (サテライトスコープ代表)
「新たな価値」を追求し続ける3社
会見で、「同質競争からの脱却」「質での競争」というフレーズを繰り返したのは、ライフの岩崎高治社長だ。コロナ後の世界でも競合相手や競争環境が大きく変わることはなく、自社の基本戦略である商品の品質やサービス向上によって、価格に偏重した同質競争から抜け出す、という考え方である。
その軸の1つが、プライベートブランド(PB)を中心に自然派・オーガニックの商品を扱う「BIO-RAL(ビオラル)」事業だ。今期(21年度)は近畿圏と首都圏の両方で計3店を開業、さらにPBとしての「ビオラル」商品についても既存店でコーナー展開するなど全社的に波及させている。同事業はコロナ禍での健康志向の高まりや、若年層を中心とした消費財に対してサステナブル(持続可能性)を重視する風潮などを追い風に支持を拡大。岩崎社長は「ビオラルだけで100億円の売上」を長期的な目標として言及しており、今後も同事業は経営戦略上、重要な地位を担いそうだ。
その一方、ヤオコーは経営基盤を拡大することでさらなる成長をめざす方針を鮮明にしている。21年8月にはディスカウント型新業態「フーコット」を埼玉県飯能市に開業して耳目を集めたほか、同年9月には千葉県のローカルSMチェーン、せんどうとの資本業務提携を発表。フーコットについては想定を超える客数で推移するなど手応えを得ており、今年3月には東京都昭島市に2号店を開業予定だ。
サミットは、ついにネットスーパーに参入することを発表。22年度中に一部店舗で実証実験を開始する予定で、服部哲也社長の言葉を借りれば、「“ サミットらしさ”のあるネットスーパー」の構築に向けて模索するという。
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3社に共通するのは、コロナ後の厳しい競争環境を見据えて、顧客に新たな価値を提供し続けようとすることにある。それが中長期的に自社のビジネスモデルや事業規模を進化させ、ボーダレスな競争における強力な武器になる、というわけだ。コロナ特需にただ沸くだけではなく、一歩先を見据えた戦略的投資が各社の将来像をどのように変化させるのか、注目したい。
取材・文
大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長
1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。
最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士
取材・文
小野 貴之 / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン 副編集長
静岡県榛原郡吉田町出身。インターネット広告の営業、建設・土木系の業界紙記者などを経て、2016年1月にダイヤモンド・リテイルメディア(旧ダイヤモンド・フリードマン社)入社。「ダイヤモンド・チェーンストア」編集部に所属し、小売企業全般を取材。とくに興味がある分野は、EC、ネットスーパー、M&A、決算分析、ペイメント、SDGsなど。趣味は飲酒とSF小説、カメラ
取材・文
雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長
上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2015年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。
企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)済み。
取材・文
京都市出身。大手食品メーカーの営業マンとして社会人デビューを果たした後、パン職人、ミュージシャン、会社役員などを経てフリーの文筆家となる。「競争力を生む戦略、組織」をテーマに、流通、製造など、おもにビジネス分野を取材。文筆業以外では政府公認カメラマンとしてゴルバチョフ氏を撮影する。サテライトスコープ代表。「当コーナーは、京都の魅力を体験型レポートで発信します」。