「急拡大」後も参入続々 ネットスーパーのさらなる成長に向けた正しい打ち手とは?
大手の戦略は各社各様 黒字化達成のチェーンも
そうした状況下、大手を中心とした小売業は各社各様にネットスーパー戦略を推進している。イオングループでは、先述したとおり、顧客フルフィルメントセンターによるセンター出荷型のGreen Beansを23年 7月に開設。グループの事業会社が運営する店舗出荷型ネットスーパーとともに人口が集中する首都圏のシェアを奪取しようとしている。
イトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)は「イトーヨーカドーネットスーパー新横浜センター」を23年8月に立ち上げ、センター周辺の36店舗を店舗出荷型からセンター出荷型に移行した。同社では24年度(25年2月期)にも新たなセンターを開設予定で、投資先行で売上の拡大をめざす構えだ。
対照的に、店舗出荷型に舵を切るのが西友(東京都/大久保恒夫CEO)だ。西友は楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長:以下、楽天)との協業のもと、18年からセンター出荷型と店舗出荷型の「ハイブリッド型」でネットスーパーを展開してきたが、23年12月に楽天が西友との合弁を解消し、楽天の完全子会社化とすることで合意。センター出荷型は楽天が継続し、西友は店舗出荷型ネットスーパーを単独で運営する体制となった。
アマゾンジャパン(東京都/ジャスパー・チャン社長)はセンター出荷型の自社ネットスーパー「Amazonフレッシュ」を強化しながら、食品スーパー企業との協業による店舗出荷型ネットスーパーの展開にも力を入れる。直近では、ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)、バローホールディングス(岐阜県/小池孝幸社長)に続いて新たにアークス(北海道/横山清社長)との協業を発表。23年12 月から「Amazon.co.jp」上でネットスーパーを開始し、北海道での事業展開をスタートした。
各社の取り組みが進んでいく中で、ネットスーパーの“勝ちパターン”も少しずつ見えてきた。
ネットスーパーの事業黒字化は運営各社にとって長年の課題だったが、ピッキングやパッキングのオペレーション、配送の効率化などの施策が実を結び、店舗出荷型ネットスーパーの一部では店舗単位で黒字化を達成するケースもみられるようになってきた。業界ナンバーワンのネットスーパーをめざす西友では、店舗出荷型モデルにおいて、対応店舗の9割がすでに黒字となっており、当然、ネットスーパー事業全体でも利益を確保している。
ネットスーパーに関するコストのとらえ方は企業によって異なるものの、運営各社の事業収支は着実に改善に向かっており、ネットスーパーは「儲からないビジネス」ではなくなりつつあると言っていい。
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