EC売上が好調のアダストリアが、リアル店舗への来店誘導にこだわる理由
実店舗の接客経験はパーソナライゼーションに活用
アダストリアはドットエスティのシステム改善にも力を入れている。
アパレル業界において顧客満足度を上げるために――ひいては顧客単価を上げるためには、顧客一人ひとりのニーズに合わせた商品やサービスを提案する「パーソナライゼーション」が重要な要素とされている。
ドットエスティでは23年3月からパーソナライズ化の新たな試みとして、アプリ画面上で顧客の年代や性別、趣味嗜好に合ったコンテンツの配信を開始した。
「効果はまだ判別しかねる段階だが、商品の多様化と顧客の年齢層の拡大は進んでおりユーザーにマッチしたコンテンツをどう出していくかを模索中だ」(田中氏)
ドットエスティにおけるパーソナライズ化に必要なデータの分析は、店舗業務経験のある20代スタッフ4人が担当しているという。「アルゴリズムを含めたデータ解析などの専門的な領域は外部のアドバイザーに外注するが、定性的な分析は店舗での経験が重要なポイントになる。データだけを見て表面的に出した判断と、具体的なペルソナを想定した判断では大きな違いがある」(田中氏)
続けて田中氏は「蓄積された店舗での接客経験は、『ドットエスティ内の接客』としてもリアリティのあるシナリオを描くことができ、商品レコメンドに生きる。接客経験が豊富なスタッフは優れた知見とアイデアを持っているので信頼している」と述べ、多くの店舗数を誇るアパレル企業ならではの強みだと強調する。
そうした店舗スタッフ経験者による知見に加えて、オペレーションの改善(LINEで簡単に会員登録が可能になるなど)により、ドットエスティの会員数は増加傾向を継続している。リアル店舗とECの相互の価値向上をめざすアダストリアの取り組みに今後も要注目だ。