前回は、若者の間で広まっている新たな購買行動「ストップウォッチショッピング」「ウィッシュリストショッピング」について解説しました。今回は、リアル店舗の中でも差別化に成功しているバラエティショップと、店舗の小型化についてお話しします。
バラエティショップの価値とは
当社のクライアントなどを見ると、小売企業はリアル店舗という強みがあるものの、家賃などの固定費が発生するため、収益構造的にその店舗だけで採算を合わせることが次第に厳しくなっています。コンビニエンスストア(CVS)など生活のインフラとなっている業態ではまだそれほど深刻化していませんが、アパレルなど大型商業施設に入るような業態は非常に厳しい状況と言えるでしょう。
その一方、「ロフト」「東急ハンズ」「PLAZA」などといったバラエティショップが注目されています。このようなバラエティショップのコアとなる価値は「来店した際に意外な商品が並んでいること」です。「いつもある」「欲しいと思っていたものがあった」といった定番の品揃え重視型の業態というよりは、「買物における“発見”を提供する」プレーヤーなのです。
D2Cブランドの品揃えが充実
単に検索して商品を見つけるだけなら、ECに優位性があります。しかし、実際バラエティショップの店舗に行ってみると、ECのプレーヤーから見ても、よい場所・よい商品棚だと感じます。その背景には、D2Cブランドの台頭があります。メーカーが自分たちで商品を直接販売するうえでマーケティングの観点から注目しているのが、まさにバラエティショップなのです。
自分たちの製品やブランドの「ファンをどこで見つければよいのか」と考えた際、総合スーパーやCVS、ドラッグストアなどはふだん使いの固定客が多いため、新しいものを発見しようというモチベーションの高いお客はどうしても少なくなります。しかし、バラエティショップであれば、新しいものを発見したいために定期的に来る客層が存在し、認知を得たり販路をつくったりすることにとても向いているのです。意外なものを“発見する”ことと単に“検索する”ことは少しニュアンスが異なり、D2Cブランドを中心に驚きのある商品を発見できるバラエティショップはECとうまく差別化できているのです。
大商圏でのビジネスは成立しにくい
バラエティショップのほかには、100円ショップなども注目されています。彼らの最大の強みは「激しい商品の入れ替えサイクル」です。ハイスピードで商品を入れ替え、発見性を高く保っていることが長所で、ECではこのような頻度で商品を入れ替えることは基本的に難しいです。ECには実現できない発見の提供が、いつもの日用品を買いに行く業態との差別化にもなっているのです。
買物の仕方が変わり、ネット上で情報が溢れる昨今ですが、モノを触ったり見たりする価値は残されています。今後はその価値を尖らせる必要があります。
苦戦を強いられている百貨店は、これまで商圏人口100万~200万人といったエリアで出展しているケースが多かったのですが、売場の規模や場所の確保の問題もあり、最近では以前より小型のお店を複数の拠点に出し始めています。百貨店以外でも、大商圏的なビジネスが成立しないということは多くのプレーヤーが感じており、バラエティショップでもどちらかというと小さい店舗のほうが、そのような影響を受けにくいように見えます。同じバラエティショップでも、専門性の有無やカテゴリーの違いによっては、大きな店舗で展開したままだと今後苦戦することが予想されます。
今後、小売店舗は「小型」がキーワードになるでしょう。大手小売店舗でも、都心に大型店舗を出店する一方で、複数の小型店舗も展開しています。今後は、小型店舗でECの受け取り場所を増やすほか、何か発見があるような店舗づくりを意識する必要があるでしょう。
プロフィール
望月智之(もちづき・ともゆき)
ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。