楽天、KKR共同で西友買収 ウォルマート、実質日本撤退の背景と早くも焦点になる出口戦略
米ウォルマート(Walmart)は11月16日、西友への出資比率を引き下げると発表した。西友をめぐってはウォルマートが再上場させると発表するなどと揺れたが、結局、ウォルマートが西友の大半の持ち株を売却することとなった。今後、西友は米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)の下、楽天とも協業しOMO(Online Merges with Offline)を中心とした経営戦略に軸足を移す。
18年間のウォルマート流から「地域密着」へ
ウォルマートは西友株をKKRと楽天に売却し、持ち株比率を15%まで引き下げる。事実上、西友の経営への関与は弱まることになり、今後西友はKKRと楽天主導で経営力を高める。
ウォルマートは世界企業であり売上高は50兆円超と一国の国家予算並みの売上高を上げているが、海外では必ずしも成功しているとは言い難い状況だ。
流通はドメスティック産業であり、その地域に合った商売でないとうまくいかないのは多くの外資が実証済みで、ウォルマートの西友を通じた日本での事業もまだ発展途上だった。
ウォルマートは米国内でディスカウント戦略で成長。そうしたこともあって18年間、西友をてこ入れし続けてきた。
しかし、そのディスカウント戦略という「お株」も、日本ではパン・パシフィック・インターナショナル傘下のドン・キホーテなど国内のディスカウンターに奪われ、ウォルマートがバックについていた西友はその本領をなかなか発揮できていない状態だった。
なぜ流通外資は、海外展開でうまくいかないところが多いのか。
ある関係者は話す「流通外資はやはり、米国での成功体験を引きずりすぎだ」という。かつて日本に上陸した、仏カルフールを始め、英のドラッグストアチェーン、ブーツや同じく英のテスコなどもそうだった。
本国での成功体験にこだわりすぎて日本の市場や消費者ニーズとミスマッチを起こし撤退した例は枚挙に暇がない。
潜在的な巨大市場、中国でもデジタル化という潮流に押されカルフールが撤退、中国ではウォルマートについても撤退観測が浮かんでは消えており、ドメスティック産業が他国で成功させることの難しさを物語っている。
西友はこの18年、「ウォルマート流」の導入を進め、エブリデー・ローコスト(EDLC)をベースとするエブリデー・ロープライス(EDLP)政策を継続的に進めてきた。だが、地域の事情よりも売れ筋に偏重した品揃え政策が日本の消費者に十分受け入れられたとは言い難く、また店舗規模がまちまちで成功パターンを移植しづらかったことなどから当初想定したような成果を挙げられずにきた。
このようにウォルマート流を日本で展開するという戦略は昨年、「ローカライズ」を強めるというかたちに転換された。ウォルマートによる西友売却報道があった以降のことだ。西友は19年6月から、中期事業計画「スパーク2022」で「ローカル・バリュー・リテーラー」になることをミッションに掲げ、地域密着型の売場づくり、商品政策を進めることにしたのである。そしてその成果は少しずつ出始めている。
ウォルマート国際部門は近年、ブラジル、英国から撤退する一方、インドで巨額投資を行うなど、事業の選択と集中を行ってきた。今回の西友株式売却も当然、その流れに沿ったものであろう。ちなみに18年1月に行われた楽天とウォルマートの戦略的提携の記者会見ではウォルマートのダグ・マクミロンCEOがわざわざ来日したことから、もっと踏み込んだ提携内容をマクミロンCEOが打診したのではないかと訝しむ業界関係者は少なくなかった。