ワークマン「WEB限定のキャリーバッグ完売」に見る、BOPIS導入と「顧客の棲み分け」戦略とは
作業服大手のワークマン(群馬県/代表取締役社長 小濱英之)は10月、同社ECサイトで店舗受け取り限定の「マルチユースキャリーバッグ」を販売、1000個すべてを売り切った。製品開発部長の柏田大輔氏は「今後の店舗展開、新商品の開発を進めていく上で『完売』という結果は大きな自信になった」と振り返る。ECでの売上増、さらなる新規出店を狙う同社の取り組みを聞いた。
プロが認めた機能性でターゲットを拡大
9,800円(税込、以下同)の「マルチユースキャリーバッグ」はなぜ、発売即完売したのか。ワークマンの製品開発部長 柏田大輔氏はその理由を「現場作業のプロが認めた防水・収納などの優れた機能性、キャリーバッグの市場価格における優位性」の2点だと分析する。
ワークマンには10年以上にわたるロングセラー商品「ボストンバッグ(980円)」がある。容量も大きくしっかりとした作りで、ヘルメットや安全靴入れとしてプロワーカーから支持を得ている。バッグの品揃え強化として、ワークマンが得意とする防水機能を付加した防水デイバッグを販売したところ、プロワーカーだけでなく通勤通学、アウトドア用として購入する客も見られるようになった。
マルチユースキャリーバッグにも、この防水デイバッグの防水性を搭載した。急な雨でも安心の防水生地、小回りが効くキャスターを使用し、ビジネスパーソンが使うことも意識した。チャンネル登録数2.6万人を抱える旅YouTuberの「うめの」氏と意見交換をして開発を進めたという。購入した顧客からは「防水機能が抜群だった」「重いものを入れても軽く感じた」といった感想が寄せられるなど、プロ向けの商品を一般ユーザー向けに昇華することに成功した。
人気のシューズやストレッチ性のあるレインウエアも、作業員が現場で活用できる機能性を備えながら、デザイン性にもこだわるなど、商品の打ち出し方を工夫したものであり、ワークマンにとってはターゲット層拡大の「王道」だ。
キャリーバッグの9800円という値段は、ワークマンの商品の主なプライスラインである、980~2900円より、かなり高額な印象だ。しかし柏田氏は、ベンチマークしていた他社のキャリーバッグの平均価格は3~5万円であり、市場価格に比べると優位性があったと話す。機能性を担保しながらも、誰もが安心できる価格で商品を提供することが同社の「コアバリュー」なのだ。
2022年春には第二弾として、背負えて転がせるツーウェイタイプのキャリーバッグの販売を予定しており、ビジネスパーソン向け商品群の拡充を図る。