異色の米ダラーストア「ファイブ・ビロー」 究極の差別化戦略で快進撃
8~19歳にターゲットを絞るユニークな戦略
ファイブ・ビローのターゲットは、「トゥイーン」(8歳~12歳)と「ティーン」(13歳~19歳)の2つの年齢層。彼らが興味を持ちそうなカテゴリーだけに特化した品揃えが特徴だ。具体的には、「スタイル」(衣料・服飾・化粧品)、「ルーム」(インテリア雑貨)、「スポーツ」(スポーツ用品)、「プレイ」(玩具・ゲーム)、「テクノロジー」(スマートフォン関連用品)、「クリエイト」(文具・工作用品)、「キャンディ」(菓子)、「パーティ」(パーティ用品)という名称のカテゴリーに分かれている。
いずれのカテゴリーの商品も、トウィーンやティーンが好みそうなデザインで、最新の流行をとらえた商品を開発し、店名どおり5ドル(約550円)以下で販売する。新たに開発した商品は、「ニュー&ナウ」コーナーで取り扱い、流行に敏感なヤング層の購買を誘う。
売価は、菓子などの一部商品を除けば、1ドル、2ドル、3ドル、4ドル、5ドルと、キリがよくわかりやすい価格設定となっている。店内はカラフルでポップな内装に仕上げ、各売場の表示は明確かつデザイン性に富んだものとなっている。同じダラーストア業態でも、生活必需品中心の品揃えのダラーツリー(Dollar Tree)やダラーゼネラル(Dollar General)とはまったく異なる客層を対象とした、まさにトウィーンとティーン御用達の店なのである。
アマゾンと競合しないビジネスモデル
15年2月、米ウォルマート(Walmart)のEC事業、ウォルマート・ドットコム(Walmart.com)のCEO(最高経営責任者)を務めていたジョエル・アンダーソン氏が、ファイブ・ビローのCEOに就任した。アンダーソンCEOは就任翌年、「20年まで売上伸長率20%、利益伸長率20%を維持する」ことを目標に掲げた。そして、ほぼこの目標どおりの業績で推移している。
ファイブ・ビローの成功要因を、アナリストらはどのように分析しているのだろうか。まとめると、主に次の2つに整理できる。
1つは、前述のとおり、ターゲットであるトゥイーンやティーンが欲しいと思う商品を快適な買物環境で販売すると同時に、宝探しのようなワクワク感を提供していること。
2つめは、ファイブ・ビローの売価の安さだ。ECの配送料にも満たない価格であるため、ファイブ・ビローのビジネスはアマゾン(Amazon.com)と直接的には競合しない。そのため同社は、「アマゾン・プルーフ(アマゾンへの耐性が強い)」企業の1つと言われている。
18年11月、ファイブ・ビローは、ニューヨークのマンハッタンに初出店した。フィフスアベニューにあるその店の売場面積は、ファイブ・ビローの平均売場面積よりも250㎡ほど広い約1000㎡の店舗である。マンハッタンへの出店は、ファイブ・ビローがこれまでほとんど出店してこなかった都市部への進出の起爆剤とも言えるもので、同社の快進撃は当面続きそうだ。