流通再編の衝動その5 ココカラ争奪戦で燻る再編の火種

流通ジャーナリスト:森田 俊一
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イオン系の大手2社はどう動く?!

 さて、ココカラファインがマツキヨホールディングスとスギホールディングスのどちらを選んでも売上高は1兆円を超える。DgS業界では、7824億円(2019年5月期)のツルハHDが売上高ランキングのトップに立っているが、ココカラファインの経営統合が実現すれば、業界トップの座は取って代わられる。ツルハHDに抜かれ業界2位に転落したウエルシアHDもさらに順位を落とすことになる。

 「業界トップ」や「大手」という“金看板”で人材を確保したり、不動産の取得・賃貸などおける信用力を担保するという面でも、規模のメリットはある。そのため業界ツートップの2社も、次の相手探しに注力すると業界では囁かれている。

 そうしたなか、ある中堅DgSの幹部は「ツルハHDとウエルシアHDが統合する可能性だってなくはない」と自説を披露する。

 確かに、可能性はゼロではない。その最大の理由は、両社ともにイオン(千葉県)が大株主であるからだ。イオンは現在、食品スーパー事業を地域ごとに再編し、地域で規模を拡大する戦略をとっている。イオンが食品スーパー再編に続く次の戦略としてDgSの再編に乗り出すのではないかという説は腑に落ちる。

 イオンは元来、食品スーパーとDgS、専門店を組み合わせた近隣型ショッピングセンター(NSC)を全国に多店舗化するというねらいのもと、DgS企業と次々と提携してきた。ツルハHDもウエルシアHDもその方針に沿ってイオン傘下に入ったという経緯がある。

 また、イオン系DgS各社は、医薬品のプライベートブランドの開発製造などを行うハピコムグループに加盟しており、ツルハHDやウエルシアHDの両社も定期的に顔を合わせている。そのうえ、ツルハHDは北海道・東北に強い一方で、ウエルシアHDは関東を地盤としながら中部、近畿にも店舗が多く、地域的な補完関係もある。

 仮に、ツルハHDとウエルシアHDが統合すれば、売上高は1兆5000億円超に達し、ココカラファインがマツキヨHDやスギHDと経営統合しても売上高で引き離すことができる。ツルハHDの鶴羽順専務は「業界は2、3社に集約されるかどうかはわからない。だが、確実に企業数は減っていく」と話しており、今後も大手同士の再編が起こる可能性を示唆している。

 ココカラファインに端を発する再編の火種は、燎原の火のように広がっていくことになるのかーー。(次回に続く)

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