歴史的相場高を乗り越える!オーケー、サミット、イオンらの精肉で価値を創る方法とは
記録的な猛暑が精肉市場に追い打ち
市況の変化に加え、24年の夏は平年以上の暑さも精肉市場に追い打ちをかけた。日本気象協会によると、24年夏(6~8月)の全国の平均気温は統計開始(1898年)以降、史上最高を記録している。例年、気温の上がる夏季は家庭での加熱調理が忌避され、精肉の売上は伸び悩む傾向にある。
24年夏は記録的猛暑によってその傾向がより強まり、精肉部門の売上に大きな打撃を与えたようだ。また、精肉部門にとって書き入れ時のBBQシーズンでもあるが、「ゴールデンウィークから夏場まで旺盛だった屋外でのBBQ需要は、直近2年で落ち込んでいる」との担当者の声も聞かれる。
さらに酷暑は精肉の生産量にも大打撃を与えており、とくに、豚には顕著な影響がみられた。24年夏は豚熱が流行したことに加え、暑さで斃死(へいし)が増えたため、豚の出荷頭数はさらに減少。飼料価格の高まりで年間通して値上がりを見せたが、7月には卸売価格が1㎏当たり796円(前年同月比16.9%増)となるなど枝肉市況が高騰した。
こうしてSMに逆風が吹くなかで、精肉部門はどのような施策で利益を確保しているのだろうか。

イオンリテール(千葉県/井出武美社長)では、イオン(千葉県/吉田昭夫社長)が展開するプライベートブランド(PB)「グリーンアイナチュラル」の「タスマニアビーフ」「ナチュラルポーク」など、直営農場と契約農場からの調達ルートを最大限に活用。抗生物質、抗菌剤といった動物医薬品を使用しないといった健康面での付加価値を提供しつつ、安定した調達と値入れで利益を確保している。
また、同社では鶏むね肉の薄切り、和牛の切り落としなど、「火が通りやすく、使い勝手がよい」という機能性の高さを打ち出した商品展開にも力を入れる。
オーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)は、国産和牛の1頭買いによる柔軟性の高い売価設定で、他社よりも価格を抑えつつ、店内加工で高品質な生肉を提供する。加えて、EDLP(エブリデー・ロープライス)によって一定の頭数を売り切ることでロスを減らし、利益を創出。他方、国産の豚と鶏はアウトパック化に注力し、外部のリソースを活用することでコストカットを実現する。
サミットは、総菜など他の部門と連携し、店内調理する肉総菜のほか、レンジアップ商品など即食・簡便性の高いアイテムを強化している。なかでも、半調理品の売上高は対前年同期比14.2%増(24年度第3四半期累計実績)と2ケタの伸びを記録しており、精肉部門の強力なドライバーとなっている。
平和堂(滋賀県/平松正嗣社長)の精肉部門では、24年度に新MD「味の見える化」をスタートさせた。このMDは、豚肉と鶏肉に含まれている主にグルタミン酸、オレイン酸、ビタミンEなどの旨味などに関わる成分を数値化し、さらに看板商品として強く訴求するというもの。同社は、商品の品質を裏付けるMDによって顧客の信頼を得るねらいだ。
本特集では、上記4社の取り組みのほか、専門家の提言をお届けする。相場高で従来の価格訴求策が十全に機能しなくなっているなか、自社では何ができるのか、その手掛かりがあるはずだ。
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