クックマート、独自性の高い品揃えと“ひと手間主義”で牛肉カテゴリーの価値訴求を強化
愛知県豊橋市に本社を置くクックマート。独自性を追求する商品開発や、折り込みチラシを使わない販促戦略など、一般の食品スーパーとは一線を画す運営手法を採用し、地域から支持され、業績を伸ばし続けている。同社の牛肉部門の取り組みについて取材した。
地域ブランドを揃えるほか輸入牛も品質や価値にこだわる
クックマートは、愛知県・静岡県でスーパーマーケットを展開するローカルチェーン。同社の精肉チーム統括の平山俊介氏は、牛肉カテゴリーの基本的な方針について、次のように語っている。
「当社は、お客さまに寄り添った商品提案で買いやすさを追求し、いつでもお値打ち、新鮮、おいしい、楽しいお店であることをめざしている。牛肉については、コロナ禍以降、価格や消費動向に不安定な面はあるが、直近の実績では103.8%に伸びている。一貫して安全・安心や地域ブランドなど、価値や品質を重視してきた。品揃えについても、単純な価格競争に陥らないよう、他店と直接競合しない、独自商品を増やす戦略だ」
具体的には、地元の味として知られている銘柄肉「田原牛」や、「飛騨牛」などの国産ブランドを扱うほか、輸入牛についても価値や品質にこだわり、オーストラリア産アンガスビーフ「大麦牛」を導入。
さらに店内でひと手間をかけることで、独自性を打ち出すことにつながる、ハンバーグや味付け肉などの半調理品についても力を入れている。
こうしたMDを実現するために、同社店舗はあえて人手をかけているのが特徴だ。「効率性を追求するという常識とは異なるかもしれないが、スタッフが多いことで手間のかかる作業が可能になるだけでなく、いろいろなアイデアや意見を出してもらえるという意味で、強みにもなっていると思う」(平山氏)
一頭買いにこだわることで多様な部位の提供が可能に
同社の牛肉カテゴリーの売上構成比は、国産が半分程度を占め、輸入牛が3割程度。残りは和牛や内臓肉などとなっている。
同社では、15年ほど前にさまざまな輸入牛を絞り込むために比較検討を行った。その過程で「大麦牛」についても、幹部が実際に産地を視察。植物性飼料100%で200日肥育する点や、ニッポンハムグループが一貫して管理する品質管理・生産体制などに納得したうえで、「赤身のおいしい肉」としてブランド訴求できると判断し、導入に踏み切っている。
平山氏は「供給される『大麦牛』の品質が安定しており、お客さまからの評価も高く、ブロック肉などもよく売れている」と言う。
さらに同社では、部位ごとではなく牛一頭をまるごと仕入れる「一頭買い」にもこだわっている。これによって、希少部位を含むさまざまな部位を調達でき、多様な食べ方提案や、セット商品として販売することが可能になっている。
平山氏は、「クックマートにはチャレンジを肯定する文化があり、さらに現場に権限を持たせる方針がある。牛肉についても、商品化を行う技術を持ったスタッフを多数育成しており、各店でパックの容量や売り方などを考えている。
また、試食イベントのマネキンをスタッフ自ら行うことで、来店客とのコミュニケーションの充実を図るなど、独自の取り組みも行っている」と語る。
地域密着を重視する同社では、リアル店舗の強みを生かした「リアル×ローカル×ヒューマン」をキーワードに、地域の活気が集まる店をめざしている。精肉部門はそのための重要な中核を担っているといえそうだ。