あのチェーンも導入!食品スーパーの「量り売り」、成功の秘訣は?

編集プロダクション雨輝
Pocket

「NBにない商品」と「詰め放題」体験でワクワク感を演出

 衛生面、オペレーション、管理コストなどが普及の障壁となっている量り売りコーナーだが、成功事例も存在する。

 成功した要因のひとつに田中氏が挙げるのは「NBにない品揃え」だ。前述のとおり、同じ店舗内に似たNB商品がある場合、量り売りよりも包装済みのNB商品が選ばれやすい。そこで、NBにはない商品で量り売りコーナーを構築することが重要になるというのだ。

 とはいえ、高価格帯のスーパーフードやオーガニック食品に消費者の手はなかなか伸びない。そうした中で販売が好調なのは、ナッツやグミ、とくに素材などにこだわったナチュラル系の商品だそうだ。ちなみにグローリートレーディングの直営店舗では、チョコレートコーティングされたプリュッツェルが人気だという。

 田中氏はもうひとつのキーワードとして「詰め放題」を挙げる。通常の量り売りは、商品を容器に詰めたらどのくらいの価格になるか想像しにくい。しかし「カップ1杯いくら」と価格が明示されていれば、安心感だけでなくお得感も提供できる。

量り売りで「詰め放題」を提供する店も
量り売りで「詰め放題」を提供する店も

 そういった点でロピア(神奈川県)が首都圏の店舗で導入した量り売りコーナーは、これらの要因を満たす成功事例のひとつといえよう。同店の菓子売場内にあるバルク什器に収められたグミは、NB商品では扱われていないややアッパーな商品で、「袋いっぱいで◯円」という詰め放題で販売している。カラフルな色彩で売場を盛り上げながら、「詰め放題」をお客に体験してもらうことでお得感とワクワク感を提供しているのである。

 「NBにはない商品」を「詰め放題」で提供する量り売りは、高価格帯の商品を計量方式で量り売りする場合と比べて、利益率は低い。とはいえ、「詰め放題体験が提供する『楽しさ』は、お客さまにとっての店舗の魅力を高める価値になる」と田中氏は強調する。

 他方、計量方式にも「日本らしい量り売り」とも言うべき事例が出てきている。「関西の食品スーパーでは、いりこや昆布など出汁に使われる素材の量り売りを実施したところ、販売が好調だ。『ちょうどいい量が欲しい』という核家族の需要や、『湯豆腐用の昆布が一枚だけ欲しい』という単身世帯のニーズに合っているようだ」(田中氏)

 日本の食品スーパーに量り売りが導入されてからわずか10年ほど。黎明期から成長期へと移行するには「継続」がポイントとなる。田中氏によると、重要なのは「お客も店舗も、さほどコストをかけずに手軽にできること」だという。什器を提供する販売店として「成功事例をもとに小売店をフォローしながら、ご提案とお客様への価値提供につなげていきたい」と田中氏は意欲を語った。

 

1 2

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態