多様化するギフト機会の中で、減少続く中元・歳暮の生きる道

宮川 耕平(日本食糧新聞社)
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ギフトの脱フォーマル化とは、すなわち多様化のこと

各社は夏のグルメを楽しむ機会として、中元・歳暮の再定義を試みる(写真は大丸松坂屋百貨店)
各社は夏のグルメを楽しむ機会として、中元・歳暮の再定義を試みる(写真は大丸松坂屋百貨店)

 中元・歳暮のフォーマルギフトが減少する一方で、ギフト市場は伸びています。この傾向はギフトのカジュアル化、パーソナル化と言われていて、結局のところギフト機会が多様化したことを表しています。

 中元期と重なる5~8月を見ても、母の日や父の日がギフト機会として台頭してきました。父の日の売れ筋ギフトはウナギです。中元ギフトの売れ筋の一つでもあり、間には土用の丑の予約販売も挟みます。季節が重なれば売れ筋も似てくるようで、ウナギを贈りたいという動機があるとしても、それはいくつかの機会のいずれかに分散されてしまうでしょう。

 また、先にテクノロジーによって人のつながりは緊密になったと書きましたが、相手の今をより深く知っていれば、相手に合わせたギフトを選択することが可能になります。当たり障りのない商品から、贈り先の嗜好に踏み込んだ商品をチョイスするので、求められる商品も以前とは変わってくるのが道理です。当然、贈る機会も個々の事情に合わせるわけで、なにも中元・歳暮の時期に縛られる理由はありません。

されど中元・歳暮はギフト機会の1つ

 テクノロジーがもたらしたコミュニケーションの変容が、社交上の儀礼に与えた影響というと、年賀状が引き合いに出せるでしょう。年賀状のピークは2003年だそうで、スマホの登場前です。23年の発行枚数は、当時の4割以下に低下しています。

 それに比べると、中元・歳暮は物品を介してのコミュニケーションなので、情報テクノロジーの進化だけで淘汰されるものではありません。むしろ物品を介すことに、新たな価値が生じないとも限りません。

 人と人のつながりが変容してしまった後で、以前のような動機で贈答し合うのは困難です。そういう意味で、もはや中元・歳暮はギフト機会の「one of them」でしかありません。しかし、ギフト市場は拡大しているのです。中元・歳暮は数ある機会の1つとしては意義を失っておらず、その中身は時代に合わせて変化も可能です。バレンタインやハロウィン、母の日、父の日などが変容しながら関連市場を大きくしているようにです。

 百貨店をはじめとする各業態では、伝統的な贈答文化を大事にしつつ、お取り寄せグルメやスイーツを楽しみ、それをシェアする機会として中元・歳暮の再定義を試みています。

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