台東区産業フェア2020/コロナ禍でも販路開拓支援につながる情報を発信

2020/10/02 07:00
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    台東区で活動する企業や団体の魅力をPR

    台東区産業フェア2020

    上野や浅草などの観光地が有名な台東区だが、実は地場産業が盛んな地域でもある。そうした区内の産業の魅力を伝えるため、台東区では「台東区産業フェア」を開催してきたが、今年は新型コロナウイルスの影響により、会場を使用しての開催は断念。代わりに、ウェブ媒体などを使いながら、年間を通じて各事業者の取り組みを紹介することにした。当サイトでも二つの事業者を取り上げる。

    台東区には革製品やジュエリーなどを製造・販売する企業が多く、江戸時代から続く工芸品の職人も少なくない。また、若いデザイナーによるファッション雑貨の店やおしゃれなカフェも次々にオープンしている。こうした台東区の多様な産業の魅力をより多くの人に知ってもらい、販路開拓につなげたいと、区が2016年に立ち上げたのが「台東区産業フェア」だ。

    初年度はバイヤーを対象にした展示会としてスタートしたが、2回目以降は一般の人も来場できるように、ワークショップや職人による伝統工芸の実演も実施。その結果、認知拡大が進み、昨年は105社が参加。来場者は2155人を数えた。

    5回目を迎える今年は会場を使用した展示商談会は中止となったが、さまざまな方法で事業者の魅力をPRしている。まず、参加予定だった事業者の製品やサービスを紹介するPR冊子を制作し、過去の産業フェアに来場したバイヤー等の各所へ郵送した。また、フェイスブックでは「たいとう産業ナビ」というアカウント名で各事業者を紹介するほか、今年8月には新たに同アカウント名でインスタグラムも開設し、各事業者のPRに力を入れている。一方、コロナ禍において、ECサイトの需要が大きくなる中、各社のECサイトを消費者に知ってもらうとともに、安心して購入できるよう、区で運営しているホームページやSNSで各社のECサイトを紹介するなどの取り組みも検討している。

    山一インターナショナル/日本製+αにこだわった鞄のオリジナルブランドを展開

    オリジナルブランド「EVERWIN」は、牛革のような光沢感をもつ合成皮革。雨に濡れても手入れは簡単
    オリジナルブランド「EVERWIN」は、牛革のような光沢感をもつ合成皮革。雨に濡れても手入れは簡単

    これまで「台東区産業フェア」に2度参加し、今年もエントリーした山一インターナショナル。1975年に創業、スーツケースやビジネスバッグ、レザーグッズの企画・生産・販売と輸出入を手がける企業だ。

    オリジナルブランド「EVERWIN」の「3WAYダレスバッグ」はリュックにもなり便利
    オリジナルブランド「EVERWIN」の「3WAYダレスバッグ」はリュックにもなり便利

    「時代の流れに合わせて、海外のアウトドアブランドなどを中心に扱ってきた時もあったが、ここ数年はとくに日本製にこだわり、台東区内の職人や工場と連携したモノづくりを行っている」と話すのは、国内販売事業部部長の宮下俊也氏。日本製の鞄は縫製がしっかりしていたり、細かいところまで気が利いていたりなど、クオリティの高さは国内外で信頼が厚い。そうした信頼性の基に、デザインや素材、形状などで創意工夫して満足してもらえるモノを提案していきたいと考え、オリジナルブランドを立ち上げた。その一つが「EVERWIN」だ。さり気ない工夫や丈夫さ、使ってみてわかる本物のこだわりをコンセプトに、豊富な商品ラインアップを揃えている。

    たとえば「3WAYダレスバッグ」は、クラシックな風合いのダレスバッグを現代的にアレンジし、さらにショルダーストラップを付けることでリュックにもなって使い勝手がよい。レトロな中にもモダンな印象があり、若い世代の男性はもちろん、女性からも支持を集める。

    国内販売事業部部長の宮下俊也氏
    国内販売事業部部長の宮下俊也氏

    こうした意欲的な商品をもっと多くの人に知ってもらいたいと、2018年より「台東区産業フェア」に出展。ブースでの展示商談に加え、バイヤーと出展者双方のニーズを適合させるマッチング商談会によって、百貨店などとの新たな取引も始まったという。

    「コロナ禍で鞄業界は厳しいが、魅力的な商品をつくり続けることで、興味を持ってもらえ、購買にもつながるはず。そうした人たちに向けてアピールしていきたい」(宮下氏)

    九十九 TSUKUMO/日本発祥のビーチサンダルを日本製・小ロット・短納期で製造

    台は19色、鼻緒は12色もあり、組み合わせの楽しさも。15.0~32.0cmの18サイズ展開
    台は19色、鼻緒は12色もあり、組み合わせの楽しさも。15.0~32.0cmの18サイズ展開
    左は小山薫堂さん(放送作家、脚本家。くまモンの名付け親)のサイン入りビーチサンダル。小山さんに認められたいという思いが起業の原点にある
    左は小山薫堂さん(放送作家、脚本家。くまモンの名付け親)のサイン入りビーチサンダル。小山さんに認められたいという思いが起業の原点にある

    今回「台東区産業フェア」に初参加のTSUKUMOは、日本製ビーチサンダル専門店だ。実は“ビーサン”は日本発祥のものであり、1950年代までは兵庫県を中心に国内生産されていた。だが、レジャーの多様化や人件費高騰、さらには阪神淡路大震災もあって、生産拠点は中国や台湾、タイなどの海外へ移っていった。しかしながら、海外で製造すると、発注に制約がある上、企画してから納品されるまで3カ月余りもかかる。そこにビジネスチャンスがあると見込んだのが、TSUKUMO創業者の中島広行氏だ。

    「国内でつくれたら、もっと顧客のニーズに柔軟に応えたビーチサンダルをタイムリーに提供できるのではないか。何より日本発祥のモノがこのままなくなってしまうのは惜しい。そこで、はきもの問屋街のあった台東区に着目し、2013年に起業した」(中島氏)

    TSUKUMO創業者の中島広行氏
    TSUKUMO創業者の中島広行氏

    ビーチサンダルといえば、台と鼻緒の2パーツしかなく、海外製の安い製品も大量に出回っており差別化が難しい。そうしたなかで中島氏が注力したのは、「日本製のオンリーワン企業・小ロットで短納期・色とサイズが豊富」という自社の強みをホームページでわかりやすく発信することだった。その甲斐あって、現在、取引先はアパレル企業、スポーツチーム、自動車メーカーなど多岐にわたる。14年には、ホームページを中国語と英語でも対応できるように改善。ECサイトもいち早く立ち上げた。現在、ドイツ、トルコ、アメリカ、韓国、台湾などからも注文が入り、手応えを感じている。

    「商材はビーチサンダルだけだが、OEMでの生産、百貨店などの期間限定品、通販、海外などチャネルは多い。一つひとつを伸ばしていくことで、最需要期の夏の売上を大きくし、今後も事業を成長させていきたい」(中島氏)

    「台東区産業フェア2020」については、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、会場使用での商談会は中止となったが、参加企業リストは以下のサイトで確認することができる。

    台東区産業フェア2020

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