11期連続最高益更新! ワークマンが「高品質×低価格」の究極のトレードオフを両立できる理由
「価格」を先に決め、実現まで粘り続ける“発注力”
これらの新技術を次々に開発しながら、さらに驚くべきはその価格だ。「リペアテック」を使用した2022年モデルのダウンジャケットは3,900円、「フレイムテック」のダウンジャケットは4,900円。もはや「格安」の一言で表現できるレベルを超えた価格設定だ。
なぜ、ここまでの低価格を実現できるのか? 製品開発部マーチャンダイザーの牧野康洋氏は「『売りたい価格』を先に決め、そこからブレないことを原則としている」と語る。
「より多くの方に買ってもらえるにはどうすればよいかをまず考え、市場価格の2分の1、さらには3分の1の価格をまず設定する。その前提で、実現したい商品の開発を進める。一度決めた価格を動かすことはない」(牧野氏)
そのためには「『諦める』ではなく『割り切る』ことが重要」と柏田氏。生地、ボタン、ファスナー、縫製技術など細部まで徹底して見直し、余分なスペックや工程をそぎ落とす。
同時に、低価格を実現するポイントは、“発注力”とも形容すべき、取引するベンダーへの発注の工夫にある。
ワークマンの全チェーン店(直営店・加盟店)は、全国に977店舗(2022年12月末現在)。これはユニクロの国内店舗数(809店舗/2022年10月20日現在)を上回る規模だ。だからこそ、一定量のボリュームを確保して発注することができる。
さらに、ワークマンのアイテムは「最低でも5年間は同じものを作り続ける」(牧野氏)。流行に左右されずロングライフで着られるアイテムなので、ベンダーも長期の取引を確保した上でボリュームディスカウントに応じられるというわけだ。
ワークマンの“発注力”はそれだけにとどまらない。「3社見積り・1社決定」を徹底し、必ず3社以上の取引先を価格・品質両面で競わせた上で、最善の提案をした1社を選定する。加えて、なるべく工場の稼働が低い閑散期をねらって発注する。「各ベンダーとの交渉を重ねながら、極限まで仕入れ原価を抑え、当初設定した低価格を実現するまで粘り続ける」(牧野氏)
それができるのも、創業以来40年以上にわたって築き上げてきたベンダーとの信頼関係があってこそだろう。作業服、と一言で言っても「頭のてっぺんから足のつま先まで」そのアイテム数は膨大な数に上る。それぞれ得意分野を持つベンダーと長期にわたって取引してきたことで、「新しいアイデアを、決めた価格で実現できる」ための最良のベンダーを選び、実現することができるのだ。
「そのためにも、素材に関する勉強は欠かせない。海外の工場にも視察に行くなど常に最新の知識を備え、ベンダーと対等に議論や交渉ができるように努めている」(牧野氏)