マーケッター必見!ID-POSで自社の顧客を知り、具体的な打ち手を実践する方法とは

2022/10/28 05:55
鬼頭 一太 (電通リテールマーケティング)
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顧客情報が紐付いた購買データ、いわゆる「ID-POS」がマーケティングに活用されるようになって久しい小売業界。近年はデジタル・トランスフォーメーション(DX)が推進されたことでデジタルな顧客接点が増えており、それらから得られた顧客データの分析は小売業にとって重要なミッションとなっている。本連載では、ID-POSをはじめとした顧客の購買データ分析やデータコンサルティングなどを手がける電通リテールマーケティング(東京都)が小売業のこれからのデータ分析について解説する。

metamorworks/iStock

DX推進と同時に、顧客の理解を徹底する 

 コロナ禍による外食機会の減少に伴う内食・中食需要の増加、「ごほうび需要」による高単価商材の販売好調、リモートワーク浸透による朝食の喫食率向上と、食品スーパー業態の追い風となる市場環境が足元では続いています。ですが、ロシアのウクライアナ侵略に端を発した原油高騰、原料高騰、そして円安による値上げラッシュも9月より本格的に始まり、消費者の節約志向の高まりを危惧されている小売企業が多いかと思います。

 このような将来予測の難しいドラスティックな事業環境の変化がみられる一方で、人口の大幅減少による商圏人口の減少、少子高齢化による世帯支出の減少など、確実に訪れる中長期の事業リスクもあります。そうした中では、自社の顧客を資産として捉え、資産の最大化を図り続けるための顧客管理が必須となります。

 足元の小売業界では板カード会員からアプリ会員へのデジタルシフトが進み、分析からの打ち手が実施可能なプラットフォームも構築されつつあります。当社としては、目先のDX推進に取り組むと同時に、自社顧客の理解を徹底することを推奨します。

ID-POS分析で重要な2つの視点

 ID-POS分析による自社顧客の理解(顧客資産の管理)を促進するうえでは、2つの重要な視点があります。その1つ目は「マネジメント可能なセグメントを設定すること」です。

 ID-POS分析で得られるアウトプットを有効に活用することを目的に、当社では「優良顧客(Heavy)」「有望顧客(Middle)」「購入客(Light)」の三量層での分析を推奨しています。

 図表①は、ある食品スーパー店舗での顧客構造を示した図で、会員の売上構造と量層別の購買行動が把握できるようになっています。たとえば会員売上の5割を占める、10%の「優良顧客」は1年間で118回来店し、年間合計で2097点、52万7000円を購入していることがわかります。

図表① ある食品スーパーにおける顧客構造の分析 ※筆者作成

 また、図表②のように、「優良顧客」と「有望顧客」で購入状況を比較し、どのカテゴリー(商品)がストアロイヤルティの高い顧客から支持を受けているかを把握することができます。図表②を見ると、豆腐や半生菓子ではなく、野菜類、調味料がキーカテゴリであることが推察されます。また、同世代の顧客量層で差異を見ると、異なる気づきも得られます。

 図表③は経年での顧客の態度変容の状況を示したものです。図表③の企業は、最重要顧客である「優良顧客」の78.9%が今期も継続して「優良顧客」となっていますが、この維持率、あるいは優良顧客の購買状況が低下しているとなると、その要因分析が最優先課題となります。

図表③ 顧客の態度変容状況の経年推移 ※筆者作成

 この経年での態度変容は非常に重要で、量層を多く設定すると施策への落とし込みが難しくなるため、量層に経年での態度変容(成長顧客・維持顧客・衰退顧客)を含めた9つのセグメントでマネジメントするのがよいでしょう。

 当社では施策の効果検証も過去に多く行っています。たとえば、「優良維持顧客」に対する施策は、レスポンス率が高くても費用対効果は低いというケースがあります。その場合、自社のMD(商品政策)のコミットメント層にインセンティブを付与するよりも、「優良衰退顧客」に対して衰退ファクターとなっているカテゴリへのインセンティブを付与したほうが高い費用対効果が得られるといった検証もあります。

 データ分析を通じて自社顧客の態度変容に合わせた施策を仮説立案し、実施検証することで精度を上げていく──。そのような取り組みを通じて投資の最適配分と資産の最大化を図っていく必要があります。

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記事執筆者

鬼頭 一太 / 電通リテールマーケティング
ドラッグストアバイヤー職を経て2007年に電通リテールマーケティング入社。2013年まで同社CRM戦略企画部にてFMGC系クライアントの専任アナリスト、14年から全社営業統括を担務する
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