ドラッグストア業界のDXの現況は?後編 「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始
サイバーエージェントの連結子会社であるMG-DXは、AI技術およびオンラインを活用し、店舗での接客業務をサポートするドラッグストア・調剤薬局向けサービス「遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始。調剤薬局の人手不足問題解消や薬剤師の作業効率向上を支援する。
待ち時間の短縮は調剤薬局喫緊の課題
MG-DXは、ドラッグストア・調剤薬局を中心とした医療機関のDX推進を支援するサイバーエージェントの連結子会社だ。2020年に設立された同社はサイバーエージェント社が保有するデジタルマーケティングの知見やAI技術を活用し、データ基盤構築・収益化施策の提案・運用・実行まで一気通貫した支援体制を整えている。
主要サービスとなっている「薬急便」は、アプリのダウンロード不要で使えるオンライン診療・オンライン服薬指導・処方せんの事前送信ツール。処方せん事前送信を利用したオンライン受付と直接来局された店頭受付、両方の受付管理を一元化することで待ち状況を可視化できる受付管理機能「薬急便モバイルオーダー」も好評。スマホでの待ち状況確認に加え、調剤完了時の通知ができるため、患者の調剤待ちにおける不満解消に貢献している。同サービスは現在、会員数が50万人を突破し、大手ドラッグストアや調剤薬局チェーンでも導入が進んでいる。
近年、ドラッグストア・調剤薬局において戦略的な店舗拡大が進む一方、少子高齢化に伴う労働人口の減少、都市部への人口集中など複合的な要因により最適な人員配置が難しく、1店舗あたりの業務負荷の増大が懸念されている。
中でも問題視されているのが受付業務の人手不足だ。現状、マイナ保険証の確認や選定療養の説明など受付時の業務が煩雑化したことで時間を取られ、その度に調剤業務の手を止めなければならず、結果として患者の待ち時間の増加につながっている。待ち時間の増加はサービスの質の低下を招き最終的に顧客離反にもつながることから、多くのドラッグストアや調剤薬局が早急に対応すべき課題と感じている。
MG-DXはこうした背景から、最適な人員配置により薬剤師の業務負荷を軽減し、患者対応の品質向上を実現する「遠隔接客AIアシスタント」をサイバーエージェントのAI研究開発組織「AI Lab」と共に開発、2024年8月より提供を開始した。

服薬指導は本部や遠隔地にいる薬剤師とオンラインでつないで接客することを想定している
AIおよびオンライン活用で調剤薬局の人手不足を解消
「遠隔接客AIアシスタント」は、AI技術を活用した受付業務の自動化と薬剤師が遠隔地から接客できる仕組みを組み合わせることで、店舗での接客業務をサポートするサービスだ。
まず店舗の受付にはロボットやCGアバターなどのAIエージェントを導入。AIが保険証の確認をはじめ、過去の来店の有無やジェネリック医薬品の選択、薬の受け取り方法などを確認し、そのデータを基に薬剤師が調剤業務を行う。
AIが対応できない複雑な質問があった場合は遠隔接客システムを用いて遠隔地のスタッフによる接客対応に切り替えることで、円滑な受付業務を実現。単純な受付業務をAIエージェントが代替することで店舗スタッフの作業効率が向上し、患者の待ち時間短縮や接客の質向上にもつながる。受付業務が効率化されることで、処方せんの応需枚数増も期待できるだろう。
また、遠隔接客システムは服薬指導や健康相談にも活用できる。本部など遠隔地にいる薬剤師がオンラインの画面上で接客を行うことで、一人の薬剤師が複数店舗の接客をすることも可能だ。
これによりドラッグストア・調剤薬局は新規採用をはじめとしたコストをかけずに、薬剤師の人員不足、地域ごとの業務量の偏在などの課題を解消することができる。
さらに既存の「薬急便」との連携により、オフライン・オンラインのどちらで対応したかにかかわらず患者情報の一元管理を実現し、スムーズな情報集約および他店舗との連携が可能となる。
すでに複数のチェーンでのテスト運用が決定しており、既存の「薬急便」導入企業に加え、「薬急便」を導入していない企業からの問い合わせも増えている。
オンライン接客の普及で薬剤師の働き方改革にも貢献
ドラッグストア・調剤薬局と協業しながらDX推進を実施してきたMG-DXが、将来的にめざしているのが調剤薬局オンライン化の普及だ。
昨今、あらゆる業種において人手不足が深刻化しており、ドラッグストアや調剤薬局においても薬剤師の不足や地域ごとの人員配置、業務量の偏在が大きな課題となっている。また日本保険薬局協会(NPhA)の調査によると、マイナ保険証に関する説明や相談対応を負担に感じている薬剤師は8割を超えており、離職率を下げるためにも薬剤師にとって働きやすい環境を整えることが重要となってくる。
遠隔接客AIアシスタントは「お待たせしない薬局づくり」をめざしている。
AIと遠隔接客を組み合わせた業務効率化により、薬剤師は受付をはじめとした対人業務に時間を取られる状況から解放され、調剤業務に集中できる。これによって患者を待たせない体制を実現する。
さらにオンライン服薬指導や遠隔接客、処方せん薬の宅配といった土壌が整えば、実店舗にいなくても接客することができるため、産休・育休後の職場復帰など、女性比率の高い薬剤師の働き方改革にも貢献できるだろう。

MG-DXは11月、サービス開発および支援体制の強化を目的に「遠隔接客事業部」を新設。今後もドラッグストア・調剤薬局のサービス向上への取り組みとして、ITを活用した患者との新しいコミュニケーションを創出するとともに、AI技術を取り入れた研究開発によって、ドラッグストア・調剤薬局の課題解決に尽力していきたいとしている。
問い合わせ先:株式会社MG-DX
contact@mg-dx.co.jp
