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アマゾン、ホールフーズCEOをグローバル食品事業トップに任命したねらいとは

小久保 重信(ニューズフロント記者)
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米アマゾン(Amazon.com)は傘下の高質食品スーパーマーケット(SM)であるホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market:以下、ホールフーズ)のCEO(最高経営責任者)を務めるジェイソン・ビューケル氏を、アマゾンのグローバル食品事業を統括する役職に任命した。同氏はリアル店舗とECを融合させ、食品事業の再拡大をねらうアマゾンの重要な戦略を担うこととなる。

アマゾンの世界食料品事業「ワールドワイド・グロッサリー・ストア(WWGS)」の統括責任者に任命されたジェイソン・ビューチェル氏
アマゾンの「ワールドワイド・グロッサリー・ストア(WWGS)」の統括責任者に任命されたジェイソン・ビューケル氏

ホールフーズCEOが食品領域全体の責任者に

 2025年1月下旬、アマゾンがホールフーズのCEOを務めるジェイソン・ビューケル氏を、食品のグローバル事業「ワールドワイド・グロッサリー・ストア(WWGS)」の統括責任者に任命したことが発表された。アマゾンの小売事業部門「ワールドワイド・アマゾン・ストア(WAS:旧ワールドワイド・コンシューマー)」のCEOであるダグ・ヘリントン氏が従業員向けの社内文書で明らかにした。

 WWGSはWASの傘下にあり、今回の人事によりビューケル氏はヘリントン氏の直属の部下となる。ホールフーズのほか、アマゾン直営のSM「アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)」やレジレスの「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」なども含む食品領域全体の責任者として、戦略立案と再構築を担うかたちだ。なお、ビューケル氏は引き続きホールフーズの指揮も執る。

 ダグ・ヘリントン氏は同文書で、「WWGSは、膨大な品揃えと広範な物流網を活用し、プライム会員にとってシームレスな食体験を提供することを目的としてきた。新たなリーダーの元でも、食料品事業の統合と拡大をさらに進めていく」と述べている。

コロナ禍を経て、リアル店舗に再び投資

 アマゾンはコロナ禍における業績低迷を受けて、リアル店舗事業の見直しを余儀なくされた。たとえば、書店「アマゾン・ブックス(Amazon Books)」やECサイトでの高評価商品を集めた店舗「アマゾン・4スター(Amazon 4-star)」、ショッピングモール内の小規模店「アマゾン・ポップアップ(Amazon Pop Up)」である。アマゾン・ゴーも一部店舗を閉鎖した。

 しかし、現在は再びリアル店舗への投資を強化している。24年にはカリフォルニア州やイリノイ州、ペンシルベニア州、メリーランド州、ニュージャージー州、バージニア州などでアマゾン・フレッシュの新規出店を再開した。

 こうしたリアル店舗の投資に加えて、アマゾン・フレッシュとホールフーズの連携も進めている。近年、ペンシルベニア州フィラデルフィア郊外のホールフーズでは、新たなコンセプト店舗の試験運用が始まっている。同店舗には「マイクロ・フルフィルメントセンター(MFC)」と呼ばれる小型倉庫を併設。来店客がホールフーズにない商品をスマートフォンのアプリから注文すると、MFCで即時にピッキング・準備され、レジでまとめて受け取ることができる。

リアル店舗・ECの融合で食料品事業を拡大へ

 米証券大手ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループ(以下、ジェフリーズ)のデータによると、1兆6000億ドル(約230兆円:1ドル=146.06円で換算:以下、同)規模の米国食品市場において、ECの売上高はわずか11%にとどまる。これは、EC販売が41%を占める家電などのほかのカテゴリーと比較してはるかに低い水準であり、食料品ECの伸び代が依然として大きいことを示している。

 一方、ジェフリーズのアナリストは「食品業界で大きく成長するためには、リアル店舗を持つ必要がある」とも指摘する。アマゾンもジェフリーズと同様の見解を持つようだ。今後は、そうした考えに基づき、リアル店舗とECの相乗効果を活用していく。新たに就任した世界食料品事業トップ、ビューケル氏の下、同事業の一層の規模拡大をめざす構えだ。

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