マーク・ロリー率いる米ワンダーグループ フードデリバリー市場で急成長の理由
即配大手のジャスト・イート・テイクアウェイ(JET、オランダ本社)を、南アフリカの投資企業が42億ドルで買収することが明らかになった。
JETはパンデミックスターと呼ばれてしまっている企業だ。追い風を受けて業容を一気に拡大したが、一気に風が吹きやんでしまい、揺り戻しで業績を落として資金繰りが悪化していた。
拡大時期に海外進出を企てて買収したのがアメリカの同業のグラブハブだ。しかし本体の業績悪化で資産整理を余儀なくされて、昨年末に売却しているのだが、買収額73億ドルに対して売却額は6億5000万ドルだった。10分の1でしか売れなかったわけだ。コロナバブルの後始末といったところである。
買収によるシナジーで規模拡大を加速
さてこのグラブハブの買収で手を挙げた企業がワンダーグループだ。CEOはマーク・ロリー、ウォルマートのEC責任者として名を馳せた連続起業家である。
創業時のビジネスモデルは、フードトラック(日本のキッチンカー)に近い装備を宅配バンに施し、半調理品を宅配バンで運び、家やオフィスといった宅配地で最終調理して完成品をお客に渡すという、なかなか興味深いものだった。ゼロから調理するフードトラック型ではなくて、半調理品を使う点がカギである。
ところが住宅街で宅配バンを駐車して、アイドリングし排ガスを出しながら調理することに自治体から反対が出て、とりあえず初期構想は引っ込めて、半調理品をゴーストキッチンで料理して完成品をつくり即配するモデルへと転換したのである。
複数のブランドを用意し、注文はウェブブラウザ/モバイルアプリ/店内端末で、完成品を即配ワーカーが店舗でピックアップして運ぶか、ユーザーが店舗に来て持ち帰るかその場で食べる、という流れである。店内には小さいがイートインスペースもある。
ニューヨーク周辺にモデル店舗としてまず10店舗をオープンし、昨年初頭には古巣のウォルマートと契約してスーパーセンター内への出店をスタート、昨年末の時点で32店舗、情報では今年中に90店舗を目標にしているとされる。
グラブハブの買収によって手に入れたのは、ギグワーカーによる即配ネットワークというインフラと、マーケットプレイスに出店している外食企業と、登録ユーザーだ。登録ギグワーカー数20万人、リスティング企業数37万5000社、登録ユーザー数2460万人とされている。
既存の即配インフラを手に入れることでゴーストキッチンの拡大に弾みがつくことになるだろう。
私が注目しているのはもう一つある。ワンダーは2023年9月に
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