外食の「逆襲」で激化する、米スーパーマーケットの価格競争
スーパーマーケット間の価格競争が激化
米国人の外食が減少傾向にあることは、スーパーマーケットチェーンにとりチャンスになり得る。世界最大の小売チェーンであるウォルマート(Walmart)の米国総括CEOであるジョン・ファーナー氏は6月に、「当社の店舗を訪れる顧客は、生鮮品や肉類、乳製品などより多くの内食向け食材を求め始めた」と語った。
しかし、マクドナルドなどの値下げ競争で一部の客がファストフードチェーンに戻っていること、さらにスーパーマーケットにおいて消費者が少しでも安くお買い得な商品を求めることから、小売チェーンの売上・利益の大幅な増加につなげることは難しそうだ。
インフレ調整後の米外食産業の売上推移が横ばい傾向を続ける中、生鮮食料チェーン売上は上図のように微増の傾向を示している。
だが同時に、スーパーマーケット間の価格競争は激化している。市場調査企業の米テルシー・グループ(Telsey Group)は6月に、ウォルマート、ターゲット(Target)、アマゾン・フレッシュ(Amazon Fresh)、クローガー(Kroger)、アルバートソンズ・セーフウェイ(Albertsons/Safeway)、ホールフーズ(Whole Foods)、スプラウツ(Sprouts)の7社が西部コロラド州デンバーにおいてどのような値付けをしているか、前年同月比で比較した。
その結果、2023年6月にウォルマートよりも生鮮食品価格が14~15%高く設定されていたターゲットやクローガーについて、2024年6月にはプレミア率が6~7%に落ちていることが判明した。また、高級イメージで知られるアマゾン・フレッシュはウォルマートと比較して26%ものプレミアがついていたものが、7.5%まで大幅に引き下げられていたのである。
これは、多くの消費者が外食から内食にシフトしているにもかかわらず、来店客の節約志向が強まっているために、スーパーマーケット側がアグレッシブな値下げ競争に突入していることを示唆している。
そのため、業界全体として売上の大幅な伸びは見込みにくく、さらに収益増も望みにくい環境に置かれていると言えよう。期間限定の食品価格値下げは、顧客がライバル店に流れるのを防ぐには役立つ可能性があるが、起爆剤的な「ゲームチェンジャー」にはなりにくいと思われる。
そうした中、消費者の家計のニーズに細かく寄り添い、来店頻度と買い物額を増やしてもらえるチェーンが収益面で「勝ち組」となるのではないだろうか。