[マニラ 22日 ロイター] – アジア開発銀行(ADB)は22日、アジア発展途上国の2021年の経済成長率見通しを7.1%に引き下げた。新型コロナウイルス変異株「デルタ」の感染拡大が背景。
7月時点の予測は7.2%、4月時点は7.3%だった。ADBの見通しはアジア太平洋地域の46カ国・地域が対象。
昨年の0.1%のマイナス成長からは依然として大幅な回復が見込まれている。
22年の予測は5.4%で据え置いた。
ADBは、新型コロナの新たな変異株出現やワクチン普及の遅れ、ワクチンの効果低下などの可能性を踏まえ、見通しにはリスクが伴うとしている。
ADBによると、アジア発展途上国のワクチン接種率は8月末時点で約30%で、50%を超えている米国や欧州連合(EU)諸国などの先進国と比べて後れを取っている。
ADBのチーフエコノミスト代理、ジョセフ・ズベグリッチ氏は発表文で「新たな変異ウイルスの感染が拡大し、行動規制が再導入されている国もあり、アジア発展途上国は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)の影響を依然として受けやすい」と語った。
ADBはコロナ対策の進展状況が各国で異なることから、域内の成長ペースは一様ではないとした。中国の成長率は21年に8.1%、22年に5.5%を見込む。
ADBのマクロ経済調査部門責任者、アブドゥル・アビアド氏はメディア向けブリーフィングで、世界の市場を揺るがしている中国の不動産開発大手、中国恒大集団の債務問題について「注意深い監視が必要」と指摘。
「住宅市場は中国経済の重要な構成要素だ。不動産セクターが影響を受ければ、中国経済全体に波及する可能性がある」と述べた。
その上で、中国恒大がデフォルト(債務不履行)に陥ったとしても、中国の銀行システムは「ショックを吸収できるほど堅固な」資本バッファーを有しているとの見方を示した。
インドの成長率見通しについては21年は10.0%、22年は7.5%に据え置いた。
21年の東南アジアの成長率見通しは3.1%と、7月時点の4.0%から下方修正した。ミャンマーは18.4%のマイナス成長となる見通し。
ズベグリッチ氏は、ウイルス封じ込めとワクチン接種に焦点を当てた政策措置を取るだけではなく、パンデミック収束後には景気回復を支援するため、経済セクターを「ニューノーマル」に適応させる必要があると指摘した。