マグロもエビも植物由来! 食糧不足対策で開発が急進する「人工魚」のいま

ファイゲンバーム裕香
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ひよこ豆のタンパク質など6種の植物由来成分で作られたマグロ
Good Catch Foodsは植物由来のマグロを開発し、今年自然食スーパーのWhole Foods Marketで販売し始めた
Good Catch Foodsは植物由来のマグロを開発し、今年自然食スーパーのWhole Foods Marketで販売し始めた

 Good Catch Foodsは植物由来のマグロを開発し、今年自然食スーパーのWhole Foods Marketで販売し始めた。Good Catch Foodsの親会社、Gathered Foodsの最高経営責任者Chris Kerr氏は、「我が社のマグロは、ひよこ豆の粉とレンズ豆のタンパク質を含む、6種類の植物由来の成分で作られていて、ベジタリアンやビーガンの人だけではなく、あらゆるタイプの消費者向けに販売されている」とNew York Timesの取材に答えている。

 海や海洋生物に害を与えることなく、本物のマグロと同じ食感、風味、栄養価を持つ製品を作ることを目標に掲げており、本物のツナ缶に近づけるために、Algae oilと呼ばれる藻類オイルを使い、ツナの風味と植物由来のオメガ3脂肪酸を加えた。

 他にも、植物性由来のクラブケーキやフィッシュバーガーパティを今年末までに販売予定だ。著者が実際に同社のツナを買って食べてみたところ、見た目は本物のツナ、味は豆の風味が若干残るものの、マヨネーズや塩などとあえると、一味違うツナとして意外と食べられる。

一見すると本物のサーモンにしか見えない、Wild Typeの人工サーモン(Photo by Wild Type)
一見すると本物のサーモンにしか見えない、Wild Typeの人工サーモン(提供: Wild Type)

 他にもOcean Hugger Foodsは植物ベースの生マグロを開発し、New Wave Foodsは植物由来のエビを開発した。同じく食品企業であるWild Typeは、細胞を培養して、2018年から実験室で人工魚のサーモンを作っている。オレンジ色の切り身状になったこの人工サーモンは、まだ市場には出回っていないが、近い将来、販売されるかもしれない。

 Wild TypeのAryé Elfenbeinさんは、「我々のビジョンは、地球上で最も美味しくて、持続可能な、かつ健康的な魚と肉を作ることです。当社の製品は、従来の魚よりも優れた、安価でよりクリーンな代替品を、消費者に提供できるはず」と語ってくれた。

 国連食糧農業機関によれば、世界の魚の消費量は、1961年以降、人口の2倍の勢いで増加している。しかし、需要が増加する一方で、供給量は急速に減少している。また、全世界の漁場の約90パーセントで、持続可能な限度を超えた捕獲が行われているのだ。科学者らは、このままだと世界の漁業は、2048年までに完全に崩壊する可能性もあると指摘している。Good Catch Foodsは、持続可能なツナ代替食品によって、魚を絶滅から救うことを目指している。

 これらの植物由来の人工魚には、通常の魚にみられる水銀や、マイクロプラスチックは含まれていない。甲殻類アレルギーの人も安心して食べることができる。タンパク質源の持続可能性に対する懸念が高まって、海洋危機に直面している中、植物由来の食品が地球と、不安定な海の生態系への影響を抑えるのに、一役かうことはできるのか。また魚消費大国でもある日本で、人工魚がお目見えする日も近いかもしれない。

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