盛り上がりはNRF以上!? 関係者必見の米小売イベント「ShopTalk」レポート

解説:榎本 瑞樹(日商エレクトロニクスUSAPresident & CEO)
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“NRF以上”の盛り上がりとなった理由

 今回のショップトークが過去最大規模となった要因としては、コロナウィルスの感染拡大状況が比較的落ち着いていたことが挙げられる。今年1月14日に開催されていたNRFではニューヨークにおいてオミクロン株がピークになっていたこともあり、展示出展のキャンセルが相次いだと聞いている。本イベントにおいては、時期的にも同様のキャンセルなどはほとんどなく無事に開催された。久々のリアルな開催となったことで、人々が押し寄せ盛り上がりを見せた。

 またショップトーク自体のブランド認知が向上していることも大きい。充実したネットワーキングによって、ここ数年で「ショップトーク」の名が広く知れ渡ってきている。さらにラスベガスというアクセスしやすい立地で開催されたのも今回の盛り上がりに大きく寄与したとみられる。

注目基調講演を解説、インスタカート、サムズクラブが登壇

 ここからはショップトークでとくに注目を集めていた講演について見ていこう。メインステージで行われた基調講演はGoogleやUber、Revlonなど12の企業からCEOやPresidentが登壇した。ここではその中でもとくに興味深かった3社について紹介したい。

 まず挙げたいのが、インスタカート(Instacart)だ。同社からは7カ月前にCEOに就任したFidji Simo氏が講演を行った。インスタカートは過去10年間、オンライン買物代行を主軸としてきたが、ここ3~4年は広告事業で大きな成果を上げている。

 直近では、上場の延期や評価額の引き下げなどが発表されており、この点について「長期的に優れたビジネスを構築し、小売業を支援することに集中したい」という方針を明確にした。そのために「Instacart Platform(インスタカート・プラットフォーム)」の拡充が必要であり、優秀な人材を確保しなければならないと意思表示をした。このインスタカートの講演については、次回の記事で詳しく解説する。

インスタカート

 続いてウォルマート(Walmart)傘下の会員制スーパーマーケットであるサムズクラブ(Sam’s Club)からはCEOのKath McLay氏が登壇した。同社は会員制スーパーマーケットではコストコ(Costco)に次ぐ米売上第2位のチェーンであり、新規会員獲得数も過去最高となっている注目企業だ。

 講演では、17年より開始した「Scan & Go」「カーブサイド・ピックアップ」などの取り組みが、ミレニアム世代を中心に受け入れられていることなどが語られた。高品質・低価格なメンバーズマークブランドの商品情報をアプリから提供、店頭でのデモンストレーションや店舗内の改装、ロゴの変更などによってブランドの若返りに成功しているのも印象的だった。

 10代の若者向けアパレルを販売しているPacSun(パックサン)からはPresidentのBrieane Olson氏が登壇した。同社はメタバース、NFT(非代替性トークン)に積極的に取り組んでおり、「Roblox(ロブロックス)」「Twitch(トゥイッチ)」などのゲーム配信プラットフォームと連携しデジタルアイテムを販売している。

 たとえば、NFTでは同社のマスコットキャラクターを販売する。メタバース上で展開している「PACWORLD」というデジタルモールでは、自分のショップ内でNFTのコレクションをしたり、それらを紹介したりすることができる。これらの取り組みの目的についてBrieane Olson氏は「消費者との交流とそれによる顧客の理解、ブランドの確立」であるとし、新しい顧客接点の在り方について示唆を得られた。

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