インバウンド復調で業績急回復! 最新決算発表前に振り返る、百貨店2022年度決算
2023年の百貨店年間売上高は前年比9.2%増の5兆4211億円と、4年ぶりに5兆円の大台を回復した。しかし、大都市と地方では回復の勢いに格差が見られ、地方では百貨店がゼロとなる県も増えている。主要百貨店の23年度の進捗状況を見ると、インバウンドの急回復もあって総じて絶好調だ。
大手は好調、地方では百貨店ゼロ県が増える
日本百貨店協会によると、2023年の百貨店年間売上高は、前年比9.2%増の5兆4211億円と、4年ぶりに5兆円の大台を回復した。売上高、入店客数ともに、24年1月まで23カ月連続で前年同期比プラスを続けており、19年比では3.0%減と、ほぼコロナ前の水準まで戻している。
インバウンドに関しては、23年は204.8%増の3484億円。調査開始以来、過去最高額(2019年年間3461億円)を更新した。
しかしながらこの回復の勢いは百貨店業界全体に行き渡っているものではない24年1月に島根県で一畑百貨店が閉店、7月にも岐阜県で岐阜髙島屋が閉店する。これにより、山形県、徳島県に続き、島根県、岐阜県も百貨店ゼロ県となる見込みだ。
年間の売上高を、10都市(札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡)と、それ以外の地区に分けると、10都市の売上高は14年で約3分の2(67.5%)を占めていたが、23年には4分の3(75.9%)にまで拡大している。それだけ、地方と大都市との格差が広がったということだ。
23年度における進捗状況は、主要百貨店各社を見ると、インバウンドの急回復もあって総じて好調だ。
23年度第3四半期(3Q)累計における各社のインバウンド売上は、髙島屋(大阪府)が前年同期の約3倍、三越伊勢丹ホールディングス(東京都)傘下の三越伊勢丹(東京都)が2.6倍、J.フロント リテイリング(東京都)傘下の大丸松坂屋百貨店(東京都)が4倍にそれぞれ拡大し、エイチ・ツー・オーリテイリング(大阪府)傘下の阪急阪神百貨店(大阪府)も過去最高ペースで推移している。
百貨店各社は、「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)を適用したため、決算上の売上規模が適用前に比べて大きく縮小。その代わりとして、以前の規模に近い総額売上も示すようになっている。
3Q累計の動向を見てみると、髙島屋(単体)の総額売上高は6.9%増、大阪店(20.4%増)、京都店(16.4%増)、新宿店(11.2%増)が2ケタ増だ。三越伊勢丹は14.8%増、伊勢丹新宿本店(13.7%増)、三越日本橋本店(9.5%増)、三越銀座店(37.0%増)が大きく伸ばしている。
大丸松坂屋は14.4%増で、とくに大丸の心斎橋店(36.6%増)、梅田店(17.4%増)、東京店(27.4%増)、京都店(15.6%増)、札幌店(17.4%増)が好調に推移している。阪急阪神百貨店は16.3%増だ。
こうした好調な業績を背景に、髙島屋、三越伊勢丹ホールディングス(HD)、エイチ・ツー・オーリテイリングは期中に通期業績予想を上方修正した。とくに三越伊勢丹HDは3度の上方修正を行っている。
当初の予定から大幅に遅れた、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)による傘下のそごう・西武(東京都)の米国投資会社フォートレス・インベストメント・グループへの売却は23年9月1日に完了した。